こんにちは、寝袋!です。
春から初夏の山登りで、雪渓を歩く機会があると思います。
冬の間に降り積もった雪が遅くまで残って、下界との季節感の違いを感じます。
登山者ならではの楽しみですし、雪の感触は楽しいものです。
ただ、雪渓歩きにはいくつかの注意が必要で、今回はそのうちの1つ、
「雪渓の赤い目印には気をつけろ!」
ということをお話したいと思います。
雪渓の上のその赤いもの、ベンガラ(矢印などを描く顔料)じゃないかもしれませんよ?
雪渓の上のベンガラとは?
雪渓の上の道案内
冬山ではどんどん雪が積もるので使われることはありませんが、新しい降雪がなくなる春から初夏にかけては、雪渓の上で道迷いを防ぐために目印が描かれます。
すごくよく目立つ赤色で、これはベンガラという顔料を雪の上に撒いて描かれます。
たいていはその山の山開きの前に、登山者が道に迷わないように付けられることが多いでしょう。
登山者はこのことを知っていますから、雪渓の上に赤いものがあると視線が行くものです。
ベンガラはどんどん見えなくなる
しかし、雪渓の上のベンガラは、雪が溶けるにつれて拡散して、どんどん曖昧になっていきます。
雪が溶けるということは雪渓も小さくなるということで、しかもその頃には登山者の歩いた跡(足跡・土汚れ)が付いてますから、ベンガラが再度まかれることは少ないと思います。
ベンガラはそれで役目を立派に果たしているわけで、ありがたいことだと思います。
ただし・・・!
雪渓の上の赤にはニセモノがある
雪渓の上にある赤いものには、ニセモノがあります。
そして初心者の頃は、そのニセモノの赤いものを、ベンガラと勘違いしてしまう恐れがあるので困りものなのです。
上の写真がそうなのですが・・・これ、ベンガラをまいた跡だと思ってしまいませんか?
「雪渓の上に赤いものがあるなあ。あ、これってベンガラで描いたのが薄くなった跡だ!よし、こっちだな!」
ついついそう思ってしまっても不思議じゃないです。
広い雪渓で、足跡もなく、ガスがかかって先が見えないなんてなったら、
「こっちに矢印が伸びているように見えるぞ?」
と勝手に思い込んでしまうものなんですよね。
この写真は白馬大雪渓に付けられた「本物のベンガラ」の「薄くなった跡」なんですが、単体では見分けがつかないでしょう?
なんとなく1本線になっているからわかりますが、上の方のニセモノも、人によってラインが見えちゃうのです。
そして恐ろしいことに、少し進んだ後でも、そこからどこかにライン(のようなもの)が見えてしまう。
そして、どんどん進んでしまって、いったいどこにいるやらわからなくなり、悪くすると遭難ということになってしまいます。
「いやいや、ラインなんて見えないでしょ?」
と言う人もいるでしょう。
でも、山で不安になったときの心理って、ラインが見えてしまう(ラインに見えて欲しい)ものです。
「雪渓の上に、自然に赤いものなんてない」=「ベンガラ」
という中途半端な知識があるとなおさら、陥りやすい罠です。
ニセのベンガラの正体は氷雪藻類
雪渓の上のニセモノの赤、その正体は氷雪藻類というものです。
雪の上でも繁殖する植物があって、それが赤い色をしているのだそうですよ。
機会があれば観察していただきたいのですが、この氷雪藻類は雪の表面にだけあって、少し掘ると真っ白な雪です。
新しい雪の上ではなく、積もった雪の表面に繁殖するものなので、雪渓の上で観られるのですね。
そして、厄介なことにそれが登山者を迷わせちゃう。
これからの季節、雪渓歩きが楽しい季節です。
数ヶ月前の過去のものになった、雪の感触を遅く味わえるのは登山者だけ。
新緑や高山植物と雪のコラボはとても美しいですし。
反面、危険が潜むのも雪渓歩きですので、どうぞ注意して楽しんでください。
雪渓の上に赤いものを見つけても、すぐにベンガラのマークだと思い込むな!
今回はそういうアドバイスでした。