こんにちは、寝袋!です。
登山小説を読んでいると、
「ラジオを聴いて天気図を書いて、天気が崩れそうなので、明日急いで下山することにした」
などという表現が出てきます。
有名な一流登山者の山行記だけじゃなくて、たとえば山岳部や山岳会の日誌にも出てきます。
じつは登山者にとっては、ラジオを聴いて天気図を書くのは、それほど特別なことではないのです。
でも、不思議に思いませんか?
どうしてラジオ(から流れてくる言葉)を聴いて、絵(天気図)が書けるのでしょうか?
子供の絵描き歌だって、難しいのにね。
ラジオで天気図、スマホ全盛のこの時代に書けなくても問題ないでしょうが、じつは山で役立つときってあります。
あと、書き方の概略を知っているだけでも、ちょっと格好いいじゃないですか(笑)
ラジオで天気図を書く方法を、わかりやすく解説します。
(方法はシンプルだけど、実際に書くのは簡単じゃないですけどね!)
目次
登山記に出てくる「ラジオで天気図を書いた」の謎
一昔前は、スマホどころか携帯電話もなかったですから、登山家たちはみんなラジオで天気図を書いていました。
加藤文太郎さんの「単独行」など、みなさんもいろいろな登山記で読んだことがあるのではないでしょうか。
山岳部や山岳会で基礎知識を学んだ人ならば、素通りする「当たり前」ですけども、独学で登山を学ぶ人が多い現代では、
「いやいや、ラジオ聴いて天気図?意味がわからないんですけど?」
という人も多いはず。
まずは基礎となる知識を説明したいと思います。
NHKラジオの気象情報
登山者が聴いているラジオは、NHK第2放送です。
普段は外国語講座とか為替情報とか流してる、あまり馴染みのない、面白くもない放送ですが、ここで1日に何度か時間を決めて「気象情報」を流しています。
現在は1日に1回だけ、夕方16時に流れています。
ニュースの天気予報ではなくて、気象情報です。
言葉で絵を伝える気象情報
この気象情報というのは、各地で観測された気温とか風とか気圧のことです。
この気象情報をもとに、気象予報士が天気図を書いて、それで天気予報をします。
私達が普段目にしている天気予報は、それですね。
今回お話するのは、つまり、気象予報士がやるのと同じことを、登山者もやってる(た)ということになります。
「そんなの難しそうだし、おれは天気予報でいいよ」
と思うかもしれませんが、それじゃダメな理由もあるのです。
スマホ全盛の時代にこの知識は必要?
スマホで天気図どころか天気予報も詳しく見れる時代に、こんな知識が必要かと言われれば、
絶対に必要とは言えない
というのが正直な感想です。
でも、私は何度もラジオに助けられたことがありますし、
「あ、それは便利!自分もラジオで天気図書きたい!」
と思う登山者は、今でも多いはずなんです。
きっと、知らないか、難しいと敬遠しているだけだと思うんですよ。
理由をいくつかあげていきます。
電波届かない場所でもOK
NHKラジオ第二放送は、とんでもない山奥でも受信することができます。
携帯電波がまったくない状態でも、深~い谷にいるときでも、びっくりするほどはっきりと聴こえるのですよ。
とくに山に何日も入り込むような縦走や沢登りのときに、ラジオは威力満点です。
入山前に見た天気予報なんてどんどん変化していきますが、
「明日の天気予報は見当もつかない」
という状態になるのを防げるのです。
ちなみに株価の変動とかスペイン語講座とか、意味不明なものでも聴いていると時間が潰せます。
眠れぬ嵐の夜に、何度聴いてきたことか。
NHKラジオ第2は、そういうときにも実はありがたい(笑)
天気予報ではわからない
ラジオ入るのなら天気予報で十分だと思うかもしれませんが、山の天気予報なんてニュースではやってくれませんよね。
たとえば私の住む北海道で、天気予報のコーナーで「札幌の天気は晴れ」なんて言われても、まったく役に立たないわけです。
スマホの電波が無くなって、スマホで天気予報が見れなくなった時点で、けっこう困りません?
しかもこれから何日も縦走が続くとしたら・・・。
天気予報じゃなく変化を予想する
ちなみに、登山者は所詮登山者ですから、専門家の気象予報士さんほど、正確な予報は出来ないでしょう。
天気図書いたところで、それで天気予報が出来るかと言われたら、私はまったく自信がありません。
じつは天気図で読み取るのは、明日の天気じゃなくて、
「これから天気はどのように変化していくのか?」
だと思ってます。
たとえば。
縦走中に悪天に見舞われて、テント場で停滞することにしたとしましょう。
でも、次の日は回復するのか、さらにひどくなって数日嵐が続くのかわからず、不安だと思うんです。
「あれ、昨日よりもっとひどいじゃん! 明日は? それなら昨日のうちに下山しておけばよかった」
となることはよくあります。
そういう判断を助けてくれるのが、ラジオで天気図を書くということなんです。
ラジオを聴いて天気図を書く方法
それでは本題の、ラジオで天気図を書く方法を説明していきます。
天気図用紙を準備しよう
じつは天気図を書く用紙というのが売ってます。もちろん自作でもかまいません。
3種類売ってますので、簡単に違いを説明します。
№1(初級用) | B4 | 聴き取りに便利な記入欄付き |
№2(中級用) | B4 | 直接地図に書き込める人用 |
小型天気図帳 | A5 | 携帯用 |
ここを読んでいる初めての方なら、迷わず「№1初級者用」を買うといいです。
家で何度か書けば慣れてきますので、それから他のものを検討してください。
B4版は大きいですが、数枚ちぎって山へ持っていけば、邪魔にもならないですしメモ用紙の代わりにもなります。
ラジオの気象情報を聴き取る
ラジオの気象情報が始まると、まずは各地の気象情報を連続で伝えてきます。
石垣島から始まって、最後は富士山まで。
例として、
「石垣島 北東の風 風力4 短期は曇り 気圧は1017hp 気温は19度」
と言われたら、そのとおりに書いていくのです。
「北東の風」なんて書くのが時間がかかるので、「ホト」と書いたりします。
矢印を書いてもいいですし、自分がわかればそれでOKです。
天気も同じで、私は「ク」なんて書いてますが、天気のマークがわかればそれでもいいです。
慣れてくると地図に直接書き込んでいくのですが、最初はこのように表を作って、それをラジオが終わってからじっくりと地図に書いていくので、初心者用は便利なわけです。
ちなみに記入欄はラジオで読み上げる順番通りになっています。
続いて、決まった観測地点の他に、あちこちにいる船が測定した気象情報が伝えられます。
地名じゃなくて、北緯と東経で教えてくれます。
最後に「漁業気象」といって、低気圧や高気圧、前線の場所などを教えてくれます。
上の例のように、書き方はそれぞれで構いません。
自分がわかればそれでいいのは、どれもおなじです。
ちなみに上では低気圧1つだけ書いてありますが、実際はもっと多いですし、前線の情報などはちょっと難しいです。
ここで説明すると複雑過ぎますので、省略しますが、
「どことどこを通るラインに前線が伸びていて・・・」
というふうに、座標で示されるので、しっかりメモれば簡単にわかります。
何度か聴いて、情報の言い方に慣れてくださいね。
各地点の気象情報を地図に書き入れる
ここでラジオは終わりますが、ここからが本番。
これから聴き取った情報を地図に書いていきましょう。
今回の例「石垣島 北東の風 風力4 短期は曇り 気圧は1017hp 気温は19度」を書いていくと・・・
石垣島の丸に、風向きの線を引きましょう。
線の傾きなどは、だいたいでいいですよ。あまり几帳面にやると、時間ばかりかかってどうしようもないですから。
風力は、1なら1本、4なら4本の羽根(F)のような線を書きます。
初心者用にはちゃんと書き方の説明が一覧で載ってますから、参考にしてください。
天気は、天気マークを丸の中に書き込みます。
「雨」と「にわか雨」を分けるかどうかなど、個人によって違いますが、私は山で使う分には「晴れ、曇、雨」の3種類程度でも良いと思ってます。
天気図を書くうえで、一番大切なのは気圧です。
1017hp(ヘクトパスカル)は略して「17」と書きます。
3桁(998hpなど)の場合は、そのまま「998」と書きましょう。
これで、1つの観測地点・石垣島の記入が終わりです。
船は移動して毎日違いますから、北緯と東経で点を打って、そこに記入します。
書き方自体は同じです。
低(高)気圧を書き入れる
次に、低気圧や高気圧を書き込みます。
まずは座標(北緯東経)にバツ印を書いて、気圧を書き込みましょう。
低気圧の場合は「L」、高気圧の場合は「H」と書いて区別します。
必ず「どっちの方向へどれくらいの速さで動いている」という情報がありますから、それを「⇒」で書いておきましょう。
前線は今回省略しますが、「どこの点からどこの点へ」と座標が2つ示されますから、簡単です。
等圧線を書き入れる
そして、最後に行う、一番難しい作業が、等圧線を書くということです。
これが一番慣れが必要ですし、肝心なところでもありますので、下にコツを説明します。
でも、説明を読んだからといって、書けるようになるとは限りません。
何度か自分で書いてみて、答えの天気図(気象予報士が作ったもの)と答え合わせをしながら、身につけてください。
ちなみに私は下手で、なんとなく違和感のある、絵心のない天気図になることが多いです(笑)
あとで書きますが、それでも登山では役立つので、立派なものを書けなくても大丈夫ですよ!
等高線を書くコツ
等圧線は、各地点の気圧をもとに、書いていきます。
一番の基本は、同じ気圧の場所を通る線を書いていくことです。
最初は同じ気圧を示している観測地点を結ぶように、等圧線を引きます。
2点をまっすぐ引くよりも、途中で992hpと1004hpの2点を参考にして、
「1000はこのへんかな?」
と想像して曲線にしていきます。
また、たとえば1012の線は、1010と1014の間を通るのです。
パズルを解くように、わかりやすいところから等圧線を書いていきましょう。
低気圧や高気圧の周囲は円を描くことが多いです。
まずは低気圧と高気圧の周りに、1本等圧線を引いてみることから始めるといいですよ。
等圧線はなめらかな曲線なのですが、「だいたい」各地点の風と90度で交わりやすいです。
地形の影響もあるので絶対ではないのですが、周囲の観測地点も参考にして、曲線を読み取っていきましょう。
等圧線は絶対に交じわりませんし、絶対に分岐することもありません。
注意しましょう。
初めての人へアドバイス
私は今でも下手ですので、とても他人に見せられるようなものではありません。
初めて天気図を書く人も、たぶんかなり難しいと感じると思います。
でも、2つだけアドバイスしたいと思います。
等圧線の書き方は慣れるしかない
天気図の一番の肝であり、一番の壁である等圧線は、慣れるしかありません。
最初のうちは「絶対に間違ってはいけない」と、1つ1つ慎重に数字を読み取って、等圧線を書いていくでしょう。
でも、実は慣れてくると、ある程度適当に書くようになってくるんですよ。
この記事の中で私が書いた天気図、何枚か載せてますけど、よく見ると、色々ツッコミどころ満載なダメな天気図なんです。(恥)
でも、「正確ではないけど、天気を読み取るのには十分使える」と思ってます。
3時間かけて超精密なものを書くより、30分でそれなりのものになるように私はやってます。
実は低気圧と高気圧だけでも役立つよ
今回は、ちゃんとした天気図を書けるように、全部説明していますが、省くことが出来る所も多いです。
極端な話ですが、毎日低気圧と高気圧の場所だけを記録するだけで、だいたいの天気図が予想できます。
これは、みなさん台風が近づいてくる時の天気図をニュースで見ているでしょうから、おわかりになるのでは?
ラジオで天気図書いてみよう
昔の登山者はラジオを聴いて天気図書いていました。
スマホ全盛の時代に、もう時代遅れで必要のない知識かもしれません。
でも、登山者なら・・・
ラジオで天気図書けなくてもいいけど、方法くらいは知ってたらいいんじゃない?
と思います。
実際に今でも必要になることはありますし、NHK第2ラジオさえ入れば(たいていどこでも)、天気図を書けるというのはすごい便利ですよ。
私は縦走登山をメインにやっておりますから、とくに助けられてます。
縦走中断してエスケープするべきか?
1日停滞すれば晴れるのか?
いちかばちかの直感に身を委ねなくてもいいというだけで、大きなアドバンテージなんですよね。
あなたもラジオで天気図、書いてみませんか?