こんにちは、寝袋!です。
今回紹介する本は、
「穂高小屋番レスキュー日記」
といいます。
穂高岳山荘の小屋番としても、レスキュー隊員としても有名な、故・宮田八郎さんの書かれた本です。
遭難やレスキューに関する本はたくさんありますし、私もよく読みます。
でも、この本は、ちょっと違うんです。
語弊があるかもしれませんが、
遭難やレスキューの話なのにあったかい
んです。
宮田八郎さんとは?
宮田八郎さんは、穂高岳山荘の小屋番を務められ、同時にレスキューの最前線で活躍された人です。
残念ながら、海の事故でお亡くなりになってしまいました。
生前から山小屋のブログを通じて、自分の言葉を伝えてこられました。
その人柄は、元気ハツラツで暖かく、多くの登山者に慕われていました。
実際に会った人はもちろん、その言葉に触れた人も、
なんか自然に惹かれてしまう
そんな人でした。
生前のブログや、残されたエッセイなどを編集し、まとめたものが、こちらの本になります。
「穂高小屋番レスキュー日記」はどんな本?
レスキューのことが90%
「山小屋の日記」というジャンルの本は、山小屋での生活をもとに、
山の素晴らしさ・自然の美しさ
を、伝えてくれる本が多いです。
しかしこの本で紹介されるエピソードは、山の遭難やレスキューのことがほとんどです。
珍しい本だと思います。
「遭難の話ばかり? うーん、そういうのはちょっと・・・」
と思った人、ちょっと待ってください。
この本で書かれている遭難やレスキューは、たしかに事故ですし、命が失われることも多いです。
でも、宮田八郎さんの視点で、言葉で書かれると、それはそれで山の自然な姿に感じてくるのです。
あったかいんです。
救助する側の本心
その理由は、遭難やレスキューの様子がメインになっていないからだと思います。
どれだけ酷い事故だったか?
どういうふうに助けたか?
どれほど奇跡的なレスキューだったか?
は現場説明に過ぎないので、詳しくは語られません。
伝えてくるのは、
レスキューにあたった救助員・山小屋関係者としての心情
なのです。
そして、その宮田八郎さん自体がなんとも暖かい人ですから、魅力的なんです。
時には怒鳴ったり、あきれたり、レスキューの現場の本心が伝わってきます。
「命がけの救助っていうけど、実際、救助に自分の命はかけたことはない。だって、家族のことが大事だし、毎回命かけてたらやってられない」
「山は自己責任っていうけど、自分で責任果たせなくなった状態が遭難なんだから、助けてやらなきゃ」
印象的な言葉がたくさん出てきます。
警察の山岳救助隊のレスキュー本は多いですが、彼らでは書けない「本音」と「本心」が読み取れます。
そして、それは厳しく、暖かいものなのです。
こんな人におすすめの本です
「穂高小屋番レスキュー日記」は、レスキューのことがほとんどをしめています。
でも、誤解してほしくないのは、レスキュー自体のプロセスを書いた本ではないということです。
レスキューを通して、山の素晴らしさが伝わってくるのです。
題名に付いている「レスキュー日記」という言葉、ピッタリだなと思います。
山小屋日記でもない。
レスキュー記録でもない。
山が一番厳しさをあらわにしてくるシーンだからこそ、山に関わる人の暖かさが際立っています。
「宮田八郎さんに会いたいな~」
登山者なら、きっとそう思える本ですよ。
今、彼に会う方法は、多くはありません。
宮田八郎さんは、数多くの知人や友人の死を目の当たりにしてこられました。
そのなかで、本人が
「話したのは、ほんの短い期間だけ」
と言いながら、特別ショックを受けているのが、谷口けいさんの死です。
多くの仲間の死の中にあって、なぜ彼女の死はこれほどの衝撃だったのか?
それは、谷口けいさんのことを知ると、わかってきます。
宮田八郎さんは、知人の死に際して、一時期すごく悩んだといいます。
「山で死にたくないなら、山へ来なきゃいいのか?」
「山って悪いものか?」
そんなとき、串田孫一さんの言葉を読んで、それは間違いだと立ち直ったそうです。
「山があったから、彼らは輝けた」
「山が彼らを生かしていた」
と。
私も何回も読み返しています。いい本ですよ。