こんにちは、寝袋!です。
かつて世界最強と言われたクライマー、山野井泰史。
妻の妙子夫人とともに挑んだ山、ギャチュンカンで、登頂後に雪崩に巻き込まれ、
奇跡の生還
と呼ばれる脱出劇をくりひろげました。
凍傷により多くの指を失ったものの、2人の底力により生還を果たしたのです。
さて、このギャチュンカン登頂ならびに脱出劇について、沢木耕太郎がドキュメントを書いています。
『凍』
と名付けられたこの本は、ギャチュンカンの出来事を第三者の目で、詳細に知ることができます。
山野井泰史とは?
かつて世界最強のクライマーと呼ばれた、山野井泰史。
指を失い、年齢を経た今でも、現役でクライミングを続けています。
その姿勢、価値観は変わることがなく、決して過去の人ではなくて、
今でも登山者の間で人気ナンバー1
を誇る人物です。
山野井夫妻については、こちらで詳しく紹介しています。
ギャチュンカンとは?
![](https://nebukurou.com/wp-content/uploads/2019/03/20190326-gya1.jpg)
ギャチュンカン
標高は7,952m。8000m以下の山の中では最も高い。中国名は格仲康峰、百谷雪嶺。
ギャチュンカンは、8,000mに少し足りないので、あまり登山家たちの目が向けられない山です。
山野井夫妻が挑んだギャチュンカン北壁は、上の写真で影になったところです。
登山をする人はご存知でしょうが、どの山においても、北側というのは日当たりが悪いです。
そのため、雪や氷、低温のため、難易度が高い場合が多いです。
「凍」について
『凍』は、ドキュメント作家として有名な沢木耕太郎が、山野井夫妻を取材し、ギャチュンカンの生還劇を書いた本です。
山の知識がある人はもちろんですが、そうじゃない人でも理解できるように書かれています。
基礎的な知識に始まり、山野井夫妻の人柄、それまでの経緯を書きつつ、少しずつギャチュンカンに向かっていきます。
ですから、
山野井夫妻を知らない人
山登りはよくわからない人
でも、自然に物語に入り込んでいけるでしょう。
ギャチュンカン登頂後、下山する2人を雪崩が襲いました。
2人とも雪崩の衝撃で、視力を失ってしまいます。
下山は難しく、2晩に及ぶ壮絶なビバーク(緊急的露営)のすえ、なんとか無事に生還することになります。
並のクライマーならば、そのまま遭難死していたであろう状況でした。
2人でさえ死ぬかもしれないと考えた状況から、どうやって生還したのか?
この本を読めば、すべてわかります。
さらに、生還後の話が、とても興味深い内容が多いです。
この本は、単なる脱出サスペンスではなくて、山野井夫妻の人柄を、脱出劇を通じて伝えてくれる本なのです。
きっと、今まで山野井泰史を知らない人でも、一気にファンになると思います。
ちなみに、
「山野井泰史のことを知りたくて読んだのに、妙子夫人のファンになってしまった」
「主人公は妙子夫人」
と評価する人が続出する本なのですが、それは読んでからのお楽しみということで。
自著「垂直の記憶」との比較
![](https://nebukurou.com/wp-content/uploads/2019/03/20180106-yy06.jpg)
ギャチュンカンの生還劇(だけではなく、いくつかの登山)について、山野井泰史本人が書いています。
『垂直の記憶』という本です。
これも山野井泰史の魅力ではあるのですが、
飾ることなく淡々と書いている
のです。
それでも、充分に生還劇の様子は伝わってくるのですが、第三者の目で見るともっとすごいのです。
『垂直の記憶』を読んだ後に『凍』を読むと、
すごすぎて笑ってしまう
ほど、温度差を感じるのです。
本人たちが「たいしたことない」と書いていて、第三者が「いやいや、そんなものじゃない!」という図式。
現代によくある図式と正反対で、ほんとうに山野井夫妻の人柄が伝わってきます。
ぜひ読み比べていただきたいところです。
また、本人たちは明かさないであろう、手術、入院中の出来事なども語られています。
どちらか一冊だけ読むなら『凍』を読んでほしいです。
過小評価していない、本当の山野井夫妻の姿
を知ることが出来るでしょう。