こんにちは、寝袋!です。
冬が近づいた先日、登山道具をいろいろ整理していました。
夏から冬へ、ウェアも道具も入れ替えです。
そんななか、ふと「古くなった熊よけスプレー」が目に止まりました。
「これ、もう使うことないよな?」
「そうだ! 実際に撃ってみよう!」
そこで、晴れた風のない日を選んで、実際に熊スプレーを撃ってみることにしたのです。
「実戦で熊スプレーを撃ったことがない」ので、飛距離とか、匂いとか、持続時間とか、使用期限後の実際とか、わからないことばかり。
熊スプレーを持っている人、携帯を検討している人、実際はこんなものだと参考になれば。
知人の登山ガイドが、熊スプレーを自分で浴びちゃった経験談もご紹介します。
目次
熊スプレーとは?
熊にかけると逃げる
熊スプレー(熊撃退スプレー)とは、熊に襲われそうになった時に発射して熊からの被害を避けるための携行スプレーです。
ものによって違いますが、5~10mほどの飛距離があります。
海外を中心に広まったものですが、日本でも登山や釣りやキャンプなど、アウトドアを楽しむ人が増えるにつれ、一般に利用されるようになりました。
熊(だけじゃなく人も含めた生物全般)が嫌がる成分をスプレーで吹きかけ、逃げてもらうというものです。
唐辛子成分
主成分を見ると、カプサイシンというものがほとんどのようです。
カプサイシンは、唐辛子に含まれる辛味成分で、食べてももちろんですが、目や鼻などの粘膜につくと、強い刺激を与えます。
使用期限がある
熊スプレーには、使用期限があります。
製品によって違うのですが、3年前後となっています。
お店で買うときは、注意して買われたほうがよいでしょう。
ちなみに今回の実験で使った熊スプレーは、6年以上過ぎたものでした。
「使用期限は過ぎたけど、捨てるにはもったいないよなあ」
と思って、ついつい廃棄せずに保管していたものです。
熊スプレーを実際に撃ってみた
使用期限を3年過ぎたもの
今回の実験素材は、使用期限が2018年で、そこからさらに3年過ぎています。
熊スプレーは、使用期限を過ぎると2つの問題点があると注意されています。
- スプレーの噴射能力が落ちる
- 刺激が弱まる
現役バリバリのものを実験する勇気(財力)はありませんので、そのあたり念頭に置いて、今回の発射実験を見てください。
風のない日に
この実験は、晴れて風のない日を待って行いました。
風が弱いと思っても、実際は意外と無風ってないもので、けっこう厳選したんですよ?
なにしろ浴びたくないので、写真には写っていないですが、念のためバイクのヘルメットかぶってます。
熊スプレー発射の様子
それでは、熊スプレー発射実験のようすをどうぞ。
横から
まずは横から撮影してもらった様子を連続写真で。
使用者目線で
こちらは私の目線での連続写真です。
熊スプレー発射結果
距離3mほど
製品の説明によると、10mほど飛ぶと説明があったのですが、今回のものは全然飛びませんでした。
いっぱいに伸ばした腕よりも少し長いだけ、せいぜい2m?
自分からの距離、おおめに見ても3mといったところでしょうか?
勢いよく飛び出していくけど、その勢いが2mほどでピタッと止まってしまっていました。
まるで空気のカベにぶち当たったかのように。
10秒ほど持続
発射できた時間はだいたい10秒ほどでした。
説明では「約10秒の噴射時間」とありますので、これはあまり短くなっていないようです。
どうやら、ガスが劣化した結果、噴射力が落ちるものの、時間が短くなるというわけではないようです。
かすかな匂い
刺激・・・というか匂いですが、これは浴びていないので、よくわかりません。
ただ、浴びていないはずなのに、体のどこかに付着したようで、しばらく匂っていました。
匂いは唐辛子なんでしょうか、よくわからない匂いでした。
音は塗料スプレーより大きい
そうそう、発射して一番驚いたのは、噴射のときの音がすごく大きかったということです。
塗料スプレーやキンチョールよりもずっと大きくて、シュゴーーッと。
あのスプレー缶に詰まっていたガスが、たった10秒で空っぽになるんですから、考えてみれば当たり前でしょうか。
ガス缶からガスを抜く時に、穴を開けたことってあります?
あんな感じに、一気にガスが抜けていくんです。
色は黄色でした
あと、色が意外でした。
唐辛子ということで、なんとなく赤だと思いこんでいたのですが、黄色でした。
(参考)熊スプレーを浴びてしまった登山ガイドの話
ここで、実際に熊スプレーを浴びた登山ガイドの経験談を書きます。
「現役バリバリの熊スプレーを浴びた数少ない例」だと思いますので、参考になります。
その知人は、北海道を中心にガイドしている人です。
北海道では個人山行では携行しない人でも、お客を連れてのガイド山行では携行するという場合があります。
その人は、ガイド中に熊の気配を感じて、腰のホルスターからスプレーを取り出し、安全装置まで外しました。
しかしそのまま熊は接近せず、またホルスターに仕舞ったのです。
そのときに、安全装置をもとに戻す事を忘れてしまって、しゃがんだ時に自分の体でトリガーを押してしまったのでした。
腰のスプレーから顔をめがけてブシューーーッと。
彼曰く、
「辛いとか涙がとかじゃなくて、あまりの刺激で体全体が動かせなくなった」
「とにかく痛い。熊は逃げるとか言うけど、人間だったらその場から動けない」
だそうです。
ちなみに、北海道の登山ガイドでも、実際に熊スプレーを発射した例は、過去でも10件あるかないかと報告されています。
使用期限を過ぎた熊スプレーについて考察
さて、上のガイドの経験談や、メーカーの説明も参考に、今回の発射実験を考察してみます。
使用期限を過ぎると噴射距離はかなり劣化
- 熊スプレーは使用期限を過ぎると噴射が弱まる
- 噴射時間は変わらないが、噴射して届く射程距離が短くなる
- 射程距離が短くなると、はっきりいって役に立たない
効果も薄れていく
弱まっていくのはガスの噴射だけではありません。
唐辛子成分の刺激自体も、どんどんマイルドになっていくようです。
熊スプレーは、噴射距離の面でも、忌避効果の面でも、使用期限を過ぎたものは役に立たないと思ったほうがよさそうですね。
熊撃退スプレーに対する私見
さて、今回古くなった熊スプレーが手元にあったので、廃棄処理がてら実験してみました。
ただ、これは、
「熊スプレーはどんどん新しいものを買いましょう」
なんて言いたいわけではありません。
個人的に熊スプレーについての考えを書かせていただきます。
私は熊は人間を避けるものだと経験で知っていますので、個人的には熊スプレーは過剰防衛だと思っています。
ただ、登山ガイドがお客を率いる場合や、パーティーを率いるリーダーの場合に、
「万が一のため、お守りのため」
に、念のために携行する程度で良いと思っています。
熊は正しく接すれば、積極的に襲ってくるような生き物ではないと信じていますので。
「熊スプレーを携行する必要がある立場の方」は、持つからには使用期限に注意されて、定期的に交換をされたほうが良いとおもいます。
私自身、
「使用期限なんてただの目安で、本当はずっと使えるんでしょ?」
と思っていましたが、間違っていたようです。
どうぞご注意ください。
ただ、重ねて、熊スプレーは必須装備ではありません。
熊に出会わない知識と、出会ったときの正しい知識を身につけられる方が、おすすめです。