こんにちは、寝袋!です。
今回紹介したい本は、写真絵本『黒部の谷の小さな山小屋』です。
個人的に黒部の谷には思い入れがありますし、なかでも阿曽原温泉小屋にはとっても魅せられています。
この本は、阿曽原温泉小屋とそこで汗を流す男たち・・・いや漢たちにスポットを当てた本です。
これから黒部へ行く人も、行って好きになった人も、ぜひ手元において欲しい本です。
写真絵本?
写真集も絵本も知ってますが、写真絵本と言われると、開いてみるまでよくわかりませんでした。
基本的には写真集のようですが、子供でも読めるような簡単なことばを添えてあるので、それが写真絵本というものなのでしょうか。
私の受けた印象では、写真集というのは風景を切り取って美しさや迫力を伝えてくれますが、この本は山小屋の組み立てから解体までだったり、仕事をする人たちの様子だったり、訪れる登山者の様子だったり、動きというか時間の流れを伝えてくれます。
なるほど、写真絵本というかたちが合ってる題材なんだなと感じました。
ココを見て!
阿曽原温泉小屋は、黒部の谷の奥にある山小屋で、毎年建てては解体するという特殊な小屋で有名です。
よく知る今となっては「当たり前」のように慣れてしまっていますが、初めて知ったときは驚いたものです。
帯に書いてある「ふしぎな」という言葉、たしかにそうなんだよなあ。
私も山を案内する端くれとして、このご主人(佐々木泉さん)の行動や言葉が好きです。
山や登山者に関する日記を読んでいると、
「ああ、わかるなあ」
と妙に嬉しくなるので、私は毎日読んでます。
ところが、その日記は黒部の様子はとても伝えてくれるのですが、当然本人たちの顔写真なんて出してくれません。
お会いしたり、テレビ番組で見たりして顔かたちは知ってますが、私は彼らの仕事っぷりをもっと見たかった。
その意味で、第三者の写真家さんが撮ってくれたので、貴重なんです。
失礼ながら、
「おっさんの顔を写真で見たい」
なんて、この山小屋だけですよ(笑)
あと、山小屋を組み立てていく連続写真、解体していく連続写真は良かったです。
なにかの雑誌でこの様子は見たことありましたけど、作業者のセリフが吹き出しで書いてあって、写真絵本ならではの臨場感がありました。
先日、例の日記を読んでいましたら、「この写真絵本を読んだ小学生が小屋へ歩いてきた」と書いてありました。
「そうでしょ、そうでしょ」
と勝手にニンマリしましたが、ただの写真だったら子供には伝わらなかったんじゃないかと思っています。
行く人も行った人も
黒部下ノ廊下、水平歩道、そして阿曽原温泉小屋。
日本にはいろいろな山小屋があって、私はとくに好きな山小屋がいくつかあります。
でもここは、食べ物がどうとか景色がどうとか、他の山小屋の「好き」とはちょっと違います。
長い道を1日歩いていくだけで、もうその「スゴさ」に圧倒されるというか、敬意を持たされるというか、小屋にたどり着くまでに好きになっている感じ?
すでに好きな人も、これから好きになりに歩いていく人も、ぜひ手元において時々開いてみてはいかがでしょう。
小屋の呼ぶ声が聴こえてくるような、そんな写真絵本です。