こんにちは、寝袋!です。
冬山で登山者を襲う危機のひとつが、凍傷です。
しかし、名前は知っていても、じつは詳しい症状や、対処方法は知らない人も多いです。
凍傷にならないようにするのが一番ですが、なってしまったときの対処法を紹介します。
軽症では素人でも対処は簡単ですが、症状が重くなってくると、素人では難しい処置もあります。
しかし、少なくとも、
絶対にやってはいけないこと
というのがありますので、それだけは覚えておいてほしいと思います。
目次
凍傷とは
凍傷とは、指や足、顔などに起きる寒さによる障害です。
組織が凍結してしまう、つまり、細胞の中や周囲に氷の結晶が出来てしまうことをいいます。
皮膚はマイナス2℃で凍ってしまいますが、風が吹いたり、さらに低温にさらされると、凍傷になってしまいます。
![](https://nebukurou.com/wp-content/uploads/2019/02/OVRD1021.jpg)
ピッケルにどんどん熱を奪われて・・・
凍傷としもやけの違い
しもやけは、零下でなくても、寒さのために局部的に血流が低下するために起きます。
組織が凍結しないのが、凍傷との違いです。
どうして気づかない?
凍傷のなり始めは、ジリジリ、ピリピリと痛みます。
この段階は、多くの人が自覚します。
しかし、だんだんとその感じがなくなって、さらに手足の感覚がなくなってきてしまいます。
痛いわけでもないので、
「感覚がなくなったことに気づかない」
「ジリジリ、ピリピリから回復したと思ってしまう」
ことになり、凍傷に気づきにくいのです。
![](https://nebukurou.com/wp-content/uploads/2019/02/sick_furue.jpg)
凍傷の症状
凍傷は段階的に進行します。
表在性凍傷
皮膚が赤みを帯びて、水ぶくれが出来ることがあります。
この段階では、軽症のため、回復することが多いです。
冬山をやっている人で、この段階を経験したことがある人は、そこそこいます。
深部凍傷
そこから、皮膚が蝋のように白くなって、触っても感じず、やがて、炭のように真っ黒になってしまいます。
私達が、「登山家の凍傷」というと思い浮かべる、あの黒いアレですね。
処置1 凍っているか確認する
それでは、凍傷になったら、現場ではどう処置すればいいのでしょうか?
まずは風の当たらない場所に移動して、靴下や手袋などが濡れていれば交換します。
つまり、これ以上の進行をまずは防ぐのです。
次に、仲間(いなければ自分)の脇や股(温かいところ)に挟んでもらい、10分ほど温めてみます。
これで感覚が戻ってくれば、大丈夫です。
もし、戻ってこなければ・・・凍結しているということです。
その場合は、患部を溶かす「急速融解」に移ります。
処置2 急速融解
まずは、小屋やテントなどの安静な場所を確保します。
コッフェルや鍋などにお湯を沸かします。温度は37~39℃です。
そこへ、凍結した部位を入れて急速に温めるのです。
凍傷の部位の温度が、他の場所と同じ温度になるまで、温めます。
20分から60分ほど、かかる場合があります。
お湯はどんどん冷めてしまいますから、お湯を足したりして一定に保つようにしなければなりません。
ここで、猛烈な痛みが襲ってくることになりますので、痛み止めを飲んでおくといいでしょう。
痛いということは、組織が生きていた証拠であって、回復するということです。
このときの痛みは、経験するまではわかりません(私も経験していません)が、正座して足が痺れた後に血行がよくなったときの痛み、あれと同種の痛みと想像します。
あれの何倍か?は知りません。知りたくもないですね。
復温(温度を戻すこと)に成功したら、乾かして、ガーゼや包帯をあてます。
絶対にやってはいけないこと
「表在性凍傷」の段階、脇や股に挟んで回復させるというのは、一般の登山者でもなんとかできます。
しかし、急速融解が必要な段階になってくると、かなり難しそうだと思いませんか?
そこで、「低体温症」のときにもお世話になったドクターに、
「せめて、素人がやってはいけない間違い」
を聞きまして、勉強してきました。
- 絶対に水ぶくれを破らないこと(凍傷後は感染しやすいから)
- こすってあたためようとすること
- 温風やストーブで加熱すること(均一に加熱できないから)
- 復温したあとに再凍結させること(その恐れがある場合は、そもそも融解してはいけない)
これだけは、私達も覚えておく必要がありそうです。
誤った認識で、さらに悪化させることだけは、避けなければいけません。
最後に
先生に伺うと、
「かなり重症のように見えて真っ黒でも、最終的に切断するかどうかはわからない。時間がたって初めてわかること」
だそうです。
低体温症と同じく、私達では、適切な対処を、しかも環境の悪い山の上で行うことは、難しいと思います。
せいぜい、初期の「10分間、温める」くらいではないでしょうか。
本人も、仲間も、動揺しているでしょうから、冷静に物事を運ぶことすら出来ないかもしれません。
ですから、
絶対にやってはいけないこと
だけは覚えておいて、それを避けましょう。
そして、なるべく早く専門家の手に委ねるべく、努力することしかないと思います。