こんにちは、寝袋!です。
富山県黒部峡谷の奥地に、阿曽原(あぞはら)温泉小屋はあります。
登山者に人気のコース「水平歩道」や「下ノ廊下(しものろうか)」を歩く上で、欠かせない山小屋です。
いっぽう、登山者だけでなく温泉マニアにも、
「日本一行くのが危険な温泉」
として有名です。
黒部という特殊な土地にあるので、この山小屋は、他とはちょっと違う点もあります。
「阿曽原温泉小屋へ行ってみたい!」
「黒部峡谷を歩いてみたい!」
という人は、絶対に調べてから行くべきです。
阿曽原温泉小屋、行って損なし!
目次
阿曽原温泉小屋とは?
黒部峡谷は、日本の中でも最も厳しい自然環境の1つです。
その谷の奥に、崖にしがみつくように建っている山小屋が、阿曽原温泉小屋です。
もしこの山小屋がなかったら・・・もしこの小屋番がいなかったら・・・
黒部峡谷を一般の登山者が歩くことは、不可能になるでしょう。
黒部という大自然の中に、人間が立ち入るための最前線の砦と言えます。
誰がやってるの?
小屋番は、佐々木泉さんです。
元富山県警山岳警備隊で、山のエキスパートです。
富山弁で豪快に話す姿は、一見怖そうですが、とても優しい山男です。
厳しさはすべて、登山者の安全のためなのです。
この佐々木さんをして、
「黒部に例年はない」
と言わせるほど、黒部の環境は毎年変わります。
豪雪、雪崩、強風、雪の融け方、で同じ年は2度とないのです。
そのため、登山道を臨機応変に直したり、新しいルートを工作したりしなければいけません。
佐々木さんほどの山男でなくては、務まらないでしょう。
私感ですが、日本最強の山小屋主人と思っていますし、大好きな人です。
余談ですが、ゴム長履いてさっそうと歩く姿、惚れ惚れします。
毎年組み立てて解体する小屋
「黒部にどんな立派な小屋を建てても、雪崩で壊されるのが関の山」
ということで、阿曽原温泉小屋は、毎年組み立てて解体することを繰り返します。
冬の間は、小屋の部材はコンクリートのトンネルの跡地に保管されています。
もちろん佐々木さん一人で出来る仕事ではないので、佐々木さんを慕う仲間たちの手によって維持されているのです。
こういう方々がいつか居なくなってしまったら、この小屋は、このルートは、どうなってしまうのでしょう?
行けるうちに、たっぷり行っておきましょう。
以前、黒部に豪雨が降ったとき、仙人谷の橋が流されてしまいました。
ちょうど修復されているところを通りかかり、無事に通してもらいました。
「これを一人で直すのか?」
と、木っ端微塵になった橋の残骸を見て思った記憶があります。
阿曽原温泉小屋へのアプローチ
「どうしてこんな奥地に、山小屋が必要なのでしょうか?」
上の図のように、
- 欅平(けやきだいら)から水平歩道
- 黒部ダムから下ノ廊下
- 仙人池から雲切新道(くもきりしんどう)
と、どこから歩いても、1日歩かねばなりません。
どのルートも、登山者のあこがれで大人気です。
断崖絶壁に岩をくり抜いて作られた、驚くべき「水平歩道」。
「黒部に怪我なし」
つまり、黒部では落ちたら絶対に「死亡」で、「怪我で済むことがない」ということです。
志合谷のトンネル(ヘッドライト必須)など、ルートにも変化があって飽きません。
スリルがあって、とても面白いルートです。
下ノ廊下は、「水平歩道」よりさらにアクロバティックで危険な道です。
手すりは針金だけ、足場は組んだ丸太だけ、という場所も多いです。
阿曽原温泉小屋に宿泊しよう
いずれのルートから来るにしても、この山小屋(もしくはテント)に泊まらないのは、もったいないです。
無理して通過できないことはありませんが、オススメしません。
めったに来れないところです。
ぜひ、ゆっくりして欲しいと思います。
なんと言っても、こんな山奥で温泉に入れるなんて、まさに贅沢です。
阿曽原温泉小屋は、名物のカレーが有名です。
テレビなどで放送される時は、たいてい繁忙期の紅葉の季節ですから、毎回カレーのように思います。
しかし、じつは繁忙期以外は、通常のおかず、ご飯、味噌汁という一般的なメニューなんです。
ご主人の佐々木さんに黒部のお話を聞く時間があれば、ぜひどうぞ。
面白いですよ。
テント場もあります
小屋を少し下がった所に、テント場があります。
高山帯のテント場ではないので、環境的にはとても恵まれたテント場です。
温泉が湧くほど地熱が高いので、ヘビが出るのがちょっと困りものですが。
テント場利用者でも、もちろん温泉に入ることが出来ます。
混雑期について
阿曽原温泉小屋は、繁忙期が他の山小屋とはちょっと違います。
お盆休みや夏休みに、人が押し寄せることは少ないと言えるでしょう。
黒部峡谷のトップシーズンは、紅葉が見頃になる9月下旬から10月なのです。
下ノ廊下の開通(雪融けにより時期は異なります)が、だいたい紅葉と重なります。
ですから、その短い期間に、大量の人が押し寄せるのです。
定員は50人となっていますが、この時期は食堂もすべて寝るスペースとなります。
100人近い人が入ることもありました。
食事は30分カレー食べ放題の3回戦となり、食べる方も提供する方も必死の形相です。
阿曽原温泉小屋の名物は、カレーと言うよりカレーの食事風景というほうが的確?でしょうか。
詳しくはあとで紹介する「阿曽原ニュース」をチェックしてください。
阿曽原温泉小屋は、救助隊も常駐する時期がある重要拠点ですから。
情報は小屋番のブログで
阿曽原温泉小屋の公式HPのなか、小屋番の佐々木さんが書いている日記「阿曽原ニュース」はとてもおもしろいです。
登山道の情報はもちろん、過去の事件、事故、山のあれこれ、警備隊時代の逸話など、ほぼ毎日更新されています。
阿曽原温泉小屋へ行く必読書
この阿曽原温泉小屋に泊まりに行くということは、黒部峡谷を歩くということです。
その時は、ぜひ、小説『高熱隧道』(こうねつずいどう)を読んでから行くべきです。
水平歩道の歴史、温泉の理由、黒部開発のあれこれがわかる、とても面白い小説(実話)です。
歩く楽しみが、2倍3倍になることをお約束しましょう。
阿曽原温泉小屋情報
かならず、公式HPの情報を確認してから、予約してください。
一から十まで電話で聞こうなどという、半端なことはやめましょう。
「HP見ればわかるようなことは、自分で調べてから電話してこいバカヤロウ!」
と、佐々木さんに怒鳴られるようなことが、ありませんように。
紅葉狙いの方々は別として、水平歩道目的の方、裏剱からの縦走者、温泉目的の人は、かえって人が少ない時期が狙い目です。
足元に気をつけて、楽しんで来てください。
【営業期間】7月中旬~10/29宿泊まで
【収容人数】50人
【料金】一泊二食 10,000円 素泊まり 7,000円
【テント場】30張 800円/人 温泉700円
【連絡先】〒938-0862 富山県下新川郡宇奈月町浦山1402-2 佐々木泉 :TEL 0765-62-1148