こんにちは、寝袋!です。
冬になるとニュースに飛び込んでくる嫌なニュース。
「バックカントリースキーで遭難し・・・」
報道でも問題視されることが多くて、一般の方々もよく聞く言葉「バックカントリー」。
寒い雪山での事故は、命にかかわる結末になることが多くて、残念なことです。
でも、私達登山者はこれを苦々しい思いで聴いていることも事実で、その想いは、
「ゲレンデ外で滑る奴らと、バックカントリーを一緒にしないでくれ!」
です。
世間では一緒くたにされる事が多いですが、私たちはバックカントリーという言葉には誇りを持っています。
- バックカントリーという言葉の意味は?
- バックカントリースキー(ボード)とは?
- 報道が一緒にするゲレンデ外滑降との違いは?
を力説したいと思います。
そして、事故が減ることを祈って、どうしてゲレンデ外滑降で事故が多いのかを考察します。
目次
雪山事故で聞くBCバックカントリースキーとは?
バックカントリーの本来の意味
バックカントリーとはアメリカで生まれた考え方で、簡単に言えば、
「奥地や未開地など、人力でしか到達できないエリア」
のことです。
そういう場所に残された、自然のままの姿を楽しむことを喜びにする人(登山者・バックパッカーなど)が使う言葉でした。
自然に分け入り、そこから体験できる自然の偉大さ・美しさに敬意を表す。そのために自らを鍛えて、自分の成長につなげる。
場所であり、行為であり、精神であり。
それを「そうではない」人たちが、
「バックカントリー?自然のことでしょ?」
と意味を広げてしまったのです。
例えばロープウェーや登山鉄道で行ける場所で見る風景のことを、登山者は「バックカントリー」とは呼びません。
誰でも見ることが出来る景色は、「フロントカントリー」と区別している方も多いのです。
登山者の世界のバックカントリースキー(ボード)
さて、そんなバックカントリーをスキーやスノーボードで楽しむのが、バックカントリースキー(スノーボード)です。
登山者が冬山を楽しむ1つの方法で、
「自分の足で雪山を登っていき、下りはスキーなどで滑降する」
ものです。
何時間もかけて冬山を登っていきますが、その時スキーなら歩くことは出来ますが、スノーボードは背負って行かなければいけません。
険しい山ではスキーでは登れない場合ももちろんあります。
「滑り降りるためには登らねばならない・・・」というか、「登ることも楽しみ、ついでに滑ることも楽しむ」のがバックカントリースキーです。
ニュースで聞くバックカントリースキーとはちょっと違うと思いませんか?
報道で耳にするバックカントリースキー
リフトで上ってゲレンデ外の新雪を滑る
最近ニュースで耳にするのは、
「〇〇スキー場で禁止されているコース外に侵入したバックカントリースキーヤーが遭難し・・・」
というものです。
登山の延長ではない
この人達は、スキー場でリフトを利用して高度を上げて、そのうえで、本来禁止されている危険なエリアを「新雪を味わう」ために滑り降りている、ただの問題スキーヤーです。
スキー場が管理していない「自然っぽい場所」を滑り降りる、自己中心的で身勝手なルール違反者です。
それを無知な報道が、「バックカントリースキー」とひとまとめにするものですから「たまったものじゃない」のです。
例えるなら・・・
サッカー場に勝手に侵入してしまった酔っぱらいのファンを警備員が捕まえて、「サッカー選手を逮捕しました」と報道する
ようなものです。
バックカントリーとゲレンデ外滑走を一緒にするな
こうして力説しても、残念ながら、バックカントリーという言葉に誇りをもって楽しんでいる人間以外には伝わらないでしょう。
そもそも雪山登山者自体が敵視されやすいのですから「一緒みたいなものじゃん」と言われても仕方がないのかもしれません。
でも、本当のバックカントリースキーヤーは、入念な準備と技術、体力、経験で自分の力を磨き、人の手の入っていない冬の自然を体感することに喜びを感じている人たちです。
もちろんそれでも、事故は起きます。
そのことに対する是非は仕方がないことでしょうが、少なくともルール違反ではなくて、登山と同じ「事故の危険性のある遊び」です。
でも、
「こっちに滑ったら面白そうじゃね?」
なんて安易な気持ちで入っていくのではないことを知ってほしいです。
一般の方々に思いは届かなくても、「バックカントリースキーとゲレンデ外スキーを一緒にするな」という叫びは上げていかないとと思います。
ゲレンデ外滑走で遭難しやすい理由
そのうえで、もちろんゲレンデ外スキーの事故が減ってほしいのも事実。
登山者の目線ですと、ゲレンデ外スキーで遭難が多いのもまったくわかりやすい話なのです。
あっという間に高度が落ちる
スキーもスノーボードも、滑降するスピード感を楽しむものですから、高度が落ちていく速さは桁違いです。
一歩一歩登る(降りる)登山でさえ、間違った道を降りてしまったときに登り返すのは精神力が必要です。
「登り返すのは面倒、いいや、このまま降りてしまえ!」
と思ってしまうのが典型的な道迷い遭難。
たった数十mでもそうなのに、何百mも一気に滑り降りたら、登り返すなんて言う選択肢は消えて当然でしょうね。
「下へいけば街に出る」という幻想
「下へ向かっていけば必ずどこか街か道に出るはず」
これが大間違いで、下へ向かえば向かうほど山の面積は広く、はたしてどこに出るかわかったものではありません。
崖に当たるか川に当たるか、違う山が立ちはだかるか。
これはバックカントリースキーヤーには知識としてあるものですが、ただのスキーヤーはそんな知識あるはずがないですから、どんどん下へ下へ下がって、そして行き詰まるのです。
例えば富士山がわかりやすいでしょうか。
富士山の上から滑り降りたら、どのくらい広い範囲に降りる可能性があるか・・・。県もまたいじゃいますよね。
ちなみにバックカントリースキーヤーは、自分の足で登ったところを降りるので、自分の位置を把握しやすいことも違いです。
登り返す体力も技術もない
また、仮に「登り返そう」と賢明にも考えたとして、雪の斜面(当然新雪)を登り返す体力も技術も道具もないでしょう。
そこにはリフトはないのですから。
フッカフカの新雪斜面をラッセルして登るのは、本当に大変です。
大げさではなく一歩も登れないかもしれません。
遭難するとは思っていない
そして雪山の中で進退窮まったとき、ただのスキーヤーはビバーク用の準備をしていませんから、厳しい状態に陥ってしまいます。
ツエルトもない、スコップもない、明かりもない、食料もない。
考えただけで辛くなります。
装備があったって辛いのに。
雪山は気軽な気持ちで入るものではない
「バックカントリースキーとゲレンデ外スキーを一緒にされたくない」という思いは強いです。
一緒くたに否定されたくないと思います。
でも、ゲレンデ外スキーの怖さを知った人が、安易にルール違反を起こさなくなり、遭難事故が減れば、それが一番理想です。
「あいつらはこう、こいつらはこう」
と力説することに、あまり意味はないのです。
ゲレンデ外に出ていく人たち、どうせならちゃんと勉強して、もっと素晴らしいバックカントリースキーの世界に入らない?
後ろめたく、ハンパな世界にいないで。