こんにちは、寝袋!です。
職業柄、いろいろな登山者と出会います。
「出会う」といっても、すれ違うとか挨拶をするとか、それで終わる人ももちろん多いですが、1~数日じっくりと同じ時間を過ごし、話をする機会も多いです。
どこの世界でもいろいろな人がいるものですが、個人的に心に残った登山者を紹介しています。
「あの人、今でも忘れないな~」
と思い出すのです。
鹿児島から北海道へ
今回ご紹介する人は、100名山を目指している方で、鹿児島から北海道へ登りに来られました。
なんでもこの山が100名山最後だそうでしたが、1年前は天候に恵まれず断念して帰っていったそうです。
遠くから来られる方は、たいてい飛行機を利用する場合が多くて、その場合はレンタカーを借りて登山口まで来られます。
この方の車をふと見ると、現代ではあまり見かけなくなった古い軽自動車でした。
「あれ?」
と思って近づいてみると、ナンバーが鹿児島です。
「うわー、おじさん、車で走って鹿児島から来たの!」
と思わず声をかけちゃいました。
せっかく登るんだから
「うん、いつもだよ。とくに今回はココだけ登りに来たんだけど、せっかく遠いところの山を登るんだから、『遠さ』も味わっておきたいじゃない?」
おじさん、少し恥ずかしそうに笑っておっしゃる。
小さな軽自動車(最近の軽じゃないのでとても狭い)に荷物をギッシリ積んで、おそらく寝るための毛布なども畳んであります。
鹿児島から北海道まで、日本を縦断して何日かけて来たんだろう?
「ここまで遠かったけど、明日ようやく登れます。天気も良さそうですし」
その前後はとても天気に恵まれていたので、きっと良い登山を楽しんで帰られたでしょう。
共感できます
私はその方にとても共感できて、嬉しくなりました。
こういう言い方が正しいかわかりませんが、きっとロマンチストだと思います。
登山者の中には、全国の山々を登ったのに、実はその山がどこにあったのかわかっていない人がいます。
近くの空港へ飛行機で飛び、バスか何かで運ばれていった先の登山口。
登山口の景色は覚えているし、泊まった宿もなんとなく覚えていて、山のことはしっかりと覚えている。
でも、その登山口がいったいどこにあったのか?
そこは何県のどの町に属する山なのか、どの県との境界を成しているのか、意識しない人が多いことに驚くんです。
100名山は日本中に散らばっているので、それらを登ることは自然と日本中を旅するきっかけになっているのに・・・もったいない!
そのおじさんはそんな説教臭いことは言っていませんが、私はそう思っちゃうんですよね。
目的地は一緒でも
同じ登山口に着いてしまえば、登る登山道も同じ。
頑張って登るのは一緒ですが、私は自力で登山口へたどり着くほうが、楽しめると思っています。
同じ山、同じ日、同じ道でも、きっとそのほうが感慨深いものになると信じています。
「飛行機とレンタカーのほうが速いし、値段も安いのに」
なんて言う人にはわからないかもしれません。
「あなたと私は同じ山を歩いているけど、観ている景色は違うんだよ?」
鹿児島から北海道へ、その山のためにわざわざ車を走らせてきたおじさん。
忘れられない人です。