こんにちは、寝袋!です。
「当たり前」のようなことなのに、意外とよく聞かれる質問があります。
それは、
「長靴で登山したらダメですか?」
という質問です。
どこの登山入門書を読んでも、長靴のことなんて一言も書いてありません。
登山靴が買えないから・・・というわけでもないみたいです。
それなのに一部の登山者が「長靴で」と思うのには、理由があるようです。
この質問の背景と、私なりの返答を書きたいと思います。
目次
長靴で登山したらダメですか?

(注)この小屋とは関係ありませんよ
質問する人に理由を聞くと、質問の背景がわかってきました。
山小屋の主人とか猟師とか履いてるよ?
一番多いのは、
「山小屋のご主人とかって、長靴で山道を歩き回ったりしてますよね? あれって、結局長靴のほうがいいってことかなと思って」
という意見でした。
たしかに、そう言われれば、私も心当たりがあります。
山で仕事をする人、例えば山小屋の主人もそうですし、猟師や木こり、けっこう長靴を履いていますよね。
そして、ふつうの登山者では厳しいような、野性的な斜面を、ガシガシと身軽に器用に登っていきます。
ああいう姿を見ると、
「長靴のほうがいいんじゃね?」
と思ってしまいます。
ベテランっぽい感じしますよね?
あと、これは長靴ではないですが、「超」のつくベテランになると、地下足袋を履いている姿も見かけます。
「登山靴なんて重いものより、こっちのほうが軽くていいべ~」
なんて声が聞こえてきそうです(想像)。
もしかすると、深く物事を考えて、追求しようとする登山者さんほど、こういう疑問がわくのかもしれませんね。
こういう場面に長靴はいい!

そこで、私なりに長靴がいいと思われるシーンを思い浮かべてみました。
実際、たしかにあるんです。
泥々グチャグチャ
まずは、登山道が雨や雪解け水でグチャグチャ・ドロドロになっているときです。
登山道の幅全部がドロドロで、一歩の置き場もなく、仕方なく浅そうな場所を選んで突破した経験、あるんではないですか?
登山靴の色がわからなくなるくらい、グチャグチャネロネロにコーティングされて・・・。
水にバシャバシャ

次は、浅い沢や水たまりを越える時でしょうか。
登山靴は防水と言っても、足首を越えると上から水が侵入してきて、中が濡れてしまいます。
ゴアテックスで覆われた登山靴は、水が抜けませんので、まず乾きません。
こういうとき、長靴はゴムで完全防水ですから、高さを越えない限りは大丈夫ですよね。
残雪期のズルズル・ツルツル
また、北海道でよく使われるのですが、スパイク長靴というものがあります。
厚めの防寒長靴のそこに、部分的もしくは全体的にピンやスパイクが打ってあって、とても便利です。
薄っすらと凍った登山道を歩くときや、まだ雪が少なくて、スノーシューやスキーやアイゼンでは歩けないとき、重宝されています。
登山靴にチェーンアイゼンをつけて歩くような時期に、大活躍します。
長靴で山を歩くむずかしさ

次に、長靴では不利だと思われることを、あげてみます。
私は登山では使いませんが、山菜採りなどで山に入る時は、長靴を使います。
サポートされないよ
まず長靴は、登山靴とちがって、足首が一切保持されません。
裸足で動く範囲と、ほぼ同じように足首が動きます。
これは、動きやすさとも取れますし、保持されないことでもあります。
足の裏痛いよ
長靴は、全面がゴムで出来ていて、多少靴底は厚めとはいえ、地面の凹凸がストレートに足底に伝わってきます。
小さな石を踏んだときのことを考えてください。
登山靴では硬い底が石の上に乗るだけで、底の平面はそのままです。
でも、長靴は底が柔らかいですから、足の裏まで小石がめり込み、痛いです。
岩滑るよ
長靴は、あまり使わない人にとっては万能のように思うでしょうが、じつは自然の岩相手にはとても滑ります。
とくに濡れた岩などはグリップしませんねえ。
つま先で立てる?
最初に書いた足首の固定と通じるのですが、みなさんは、つま先で岩場に立てますか?
硬めの登山靴ですと、岩につま先を乗っけると、登山靴自体の硬さで案外力を使わず立つことが出来ます。
ところが、柔らかめのシューズや裸足ですと、グッと足首に力を入れないと、立つことは出来ないと思います。
出来てもすごく疲れるのです。
長靴もそれと同じで、そういうシーンはとても苦手ですね。
どうしてベテランは長靴で歩けるのか?

では、最初の質問に戻りまして、
どうしてベテランは長靴でも平気で歩けるのか?
を考えます。
これは、私が山を学んだ先輩に、何度も言い聞かされたことがありまして、それが答えになります。
「ベテランは歩き方がしっかりして、歩く筋力もしっかりしている。だから、どんな靴でも歩ける」
というのです。
対して、歩き方のしっかり出来ていない人は、登山靴のサポートがないと長い時間歩けない。
歩けてもすぐに疲れてしまう。
「あれを見て、誰でも出来ると思うのは、大間違いだよ」
そう言われてきました。
山小屋の主人などが長靴でスイスイ歩くのは、登山靴のサポートなしでも歩ける基礎があるからです。
そして、そういう場合には、防水性と軽さと安さ(手軽さ)を備えている長靴が、ベストチョイスとなるわけです。
北アルプス剱岳のある山小屋のご主人、いつもランニングシューズで歩くガイドに、こう注意したそうです。
「お前がそれで歩けるのはわかっているけど、それを見た登山者が誤解するのは避けたい。頼むから登山靴履いてくれ」
そのガイドはあやまって、それからは登山靴でガイドしているそうですよ(笑)
「長靴で登山」まとめ
「長靴で登山したらダメですか?」
この答えは、NOです。
別に長靴で山を歩いても、それはその人の自由ですし、歩きやすいシーンもあると思います。
でも、山小屋の主人やベテランがそうしているのを見て、
「登山靴よりも長靴のほうがいいんじゃないか?」
と考えるのは、大間違いです。
あの人達にとってのベストでも、あなたにとってはベストではありません。
私は長靴で登ろうなんて思いませんし、あなたもきっと無理です。
一度、山菜採りや山遊び程度で試してみるのもいいかもしれませんね。
そのうえで、「長い登山でも、岩場でも行ける!」と思えば使ってください。