こんにちは、寝袋!です。
今日は、普通の登山小説とは、ちょっと違った本を紹介します。
山を舞台にした、ロマンティックな恋愛ドラマです。
山の中でたまたま出会った2人の登山者ですが、どうやらお互いに違う時代を生きているらしいと気づき始めます。
2度と会えない2人ですが、なぜか手紙だけがお互いの手元に届くのでした。
なるべくネタバレなしで書いていきます。
私、この本を読んで、
「今度熊本へ行ったら、絶対に白鳥山に登るぞ」
と決意しました。
作者のこと
著者は、梶尾真治(かじおしんじ)さん。
私はよく知りませんでしたが、代表作の「黄泉がえり」は、映画にもなっていたので名前は知っていました。
今作もそうですが、どうやらタイムパラドックスを題材にした小説が、お得意な人のようです。
あらすじ
ほんの束の間の心ときめく出会い、頭を離れない面影。滝水は、彼女が置き忘れた手帳を手がかりに訪ねてゆく。
そこで、彼女がまだこの世に誕生していない存在であることを知るのだった……。
時空を超えて出逢った男女の愛をリリカルに描く、心に沁みる長編ファンタジー。
主人公の2人は、白鳥山が大好きで、社会の雑踏から逃れるために、いつも一人で登っているのです。
頂上を目指すわけでもなく、どこか自分が好きな場所を見つけて、そこで昼寝をしたりノンビリすごすという共通点があります。
突然の雨から逃れるように、2人は出会います。
あまり知られていない祠のなかで、ほんの短い間の雨宿り。
しかし、お互いに共通するもの、惹かれるものを感じたのでした。
後日、お互いがお互いを探し始めるのですが、どうやら2人は違う時代を生きている人間らしいと気づき始めます。
なぜか、その祠の中に置いた手紙だけが相手に届き、2人は手紙のやり取りを始めるのでした。
私のようなおっさんでも、キュッと胸を締め付けられるお話です。
ぜひ、山が好きな、若い登山者に読んでもらいたいです。
のちに、演劇化もされていました。そして、その題名が、
『すべての風景の中にあなたがいます』
です。読んだ方にはわかります。この題名、泣かせます。
舞台となる山
熊本県の白鳥山、私は存在すら知りませんでした。
1,600mもありますから、九州ではかなり高い山です。
小説にも出てきますが、山芍薬(やましゃくやく)の群生が美しい山らしいですね。
そして、小説内ではあまり詳しく書かれていなかったけど、なんと苔の美しい山だそうです。
また、この山には、小説に出てきたような、祠というか洞窟のようなものが、実際にあるみたいです。
さらに、この山では、GPSやコンパスが狂う場所もある、というではありませんか。
どこまでが現実で、どこまでが想像?
いつかこの山に登ったら、その夜はこの小説を読み直してみたいものです。
熊本の地震を予言?
この小説で、2人が生きている時代の中間に、熊本で大震災があることが書かれています。
現実に熊本に震災が発生したのは2016年です。
一瞬、頭の中が混乱して、巻末の出版日を確認しましたら、2004年初版でした。
作者は意図せず地震を予兆していたことになります。
題材がタイムスリップなだけに、キツネに包まれたような気分になりました。
最後に
本のおすすめ記事って、あまり詳しく書けないのが、もどかしいです。
読んだときの面白さが消えないように、気をつけて書いたつもりですが、書きすぎていたらごめんなさい。
山を舞台にした恋愛ファンタジー小説という面白さもありますし、なにより、
主人公2人の登山自体がとても魅力的!
でした。
登山者なら、きっとわかってもらえると思います。
ああ、私も、山で美人と雨宿りしたい気分。
いや、雨宿りした気分になれた本でした。
お恥ずかしながら、私はタイムスリップにはまり、同じ作者の「クロノスジョウンターの伝説」という小説も、続けて読んでしまいました。
登山へ行けない雨の日に読んでください。
原作はもう絶版ですが、書き直しされたこちらの小説で読めます。
「すべての風景の中にあなたがいます」という題名、ピッタリです。