こんにちは、寝袋!です。
世界的に有名な登山家には、その偉業や個性で魅せられる人が多いです。
でも、わたしたち一般の登山者のなかにも、面白い登山者がたくさんいます。
登山へのアプローチの多様性は、プロの登山家には負けません。
私が2018年春に出会った人も、忘れられない印象を残してくれました。
北海道道東の低山で
初心者でも簡単に登れて、お花や景色がきれいな、ある低山でのお話です。
気持ちの良い快晴の日でした
その日は多少風が強かったものの、ずっと太陽が顔を出していて、とても気持ちの良い日でした。
低山とはいえ、単なるピストンだけではなくて、周回コースなど登山者によっていろいろと選べる山です。
私は周回コースを歩いていました。
半分を過ぎたあたりで休憩していると、1人の男性がたどり着いて挨拶を交わしました。
記念写真撮りましょうか?
お茶を飲みながら眺めていると、その男性Aさんは、山頂の方向をバックに自撮りしています。
角度など苦心して合わせている様子でしたので、
「よかったら、写真撮りましょうか?」
と声をかけました。
すると、Aさんは照れたように笑って言いました。
「いいえ、写りなんてどうでもいいんです。
会社の連中に『お前、ほんとうに登ってきたのか?』と疑われるから、証拠写真撮ってるだけなんで」
ああ、そうなんですか。
それで話は終わるかと思ったのですが、Aさんも休憩体制に入ったものですから、それからも少し会話しました。
「私、じつは」
「私、じつは、山登りなんて嫌いなんですよ~」
え? 山嫌いなのに登ってるんですか?
「だって、苦しいし、疲れるし、道具だってお金かかるし、いいことないですよ~」
まあ、それはたしかに・・・
「ただ、景色はいいし、登ったあとの温泉が気持ちいいし、ビールも美味いでしょ? だからついつい登ってしまうんですけどね」
むむ? なんかおかしいぞ?
「だから、少しでも楽に登れるように、ネットで調べては新しい道具買ったり、簡単で景色のいい山探したりするんですよね~」
私、初対面ですが、思わず笑って言ってしまいました。
「あの~、多分あなた、山が大好きですよ?」
Aさん、驚いていました。
それからAさんが出発して、その後ろを追いかける形になりました。
観てると、ところどころで足を止めては、お花や景色を眺めてるんです。
「あれで山が嫌いなんて、よく言えたもんだ(笑)」
最後に
たくさんの山に登って、いろいろな人と出会いました。
でも、自分で
「山が嫌い」
と言いつつ登っていて、山に対する愛情たっぷりな人は、このAさんだけです。
またいつか、どこかの山で会いたいものです。
「私、じつは山が嫌いで・・・」
と、きっと同じこと言っているような気がします。
その時は、
「あなた、◯年前のあの山でも、同じこといってましたよ!」
と、教えてあげよう。
「あなた、間違いなく山大好きですよ」