こんにちは、寝袋!です。
登山家、平出和也(ひらいで かずや)さんを知ってますか?
日本には有名な登山家がたくさんいます。
ものすごい実績をもった人から、そうではない人まで。
私は登山が好きで、同じように、登山家たちのドキュメントを映像や本で見るのが好きです。
正直、詳しい実績を言われても、
「あっちの登山とこっちの登山、どっちがより高度なの?」
と、素人にはわかりません。
ですから、私の印象に残り、共感を覚える人、魅せられる人、というのは、
実績プラス個性と人柄
が大切な要素になってきます。
私が魅力を感じるクライマーの一人、平出和也さんについて、紹介します。
(トップ写真はNHK番組より)
目次
登山家としての実績
未踏峰・未踏ルート 登攀歴は以下の通りになります。
2001 | クーラ・カンリ東峰 | 7,381m |
2004 | ゴールデンピーク北西稜 | 7,027m |
ライラピーク東壁 | 6,200m | |
ドルクンムスターグ | 6,355m | |
2005 | シブリン北壁 | 6,543m |
2008 | カメット南東稜 | 7,756m |
2011 | ナムナニ南壁 | 7,694m |
2016 | ルンボカンリ北壁 | 7,095m |
2017 | シスパーレ北東壁 | 7,611m |
2019 | ラカポシ南壁 | 7,788m |
彼は、カメット南東稜とシスパーレ北東壁の登攀で、2回ピオレドール賞を獲得しています。
(2019年ラカポシ南壁初登頂により、3度目のピオレドール賞を受賞されました)
未踏ルートに興味がある人なので、とくに高さを選んで登っているわけではないようです。
それでも、8,000m峰は8座登っています。
山野井泰史さんもそうですが、
「登れるとわかっているルートは登らない」
というのが先鋭的クライマーの共通点らしく、そのため一般人からの受けはよくありません。
たぶん登山をしない人は、
「エベレストとか実績にないけど・・・?」
と思うんでしょうね。
ちなみにエベレストには6回登っているようです。
スタイル
アルパインスタイル(荷物を少なくして、少人数、少日数で速攻するスタイル)で、未踏峰、未踏ルートからの登攀を好んで登っています。
山岳カメラマン、ドローン撮影としてもプロなので、自分で映像を撮りながら登っています。
そのおかげで、私達でも高峰登山のリアルな映像を楽しませてもらえます。
「冒険の共有」とかいって世間を騙して、死んでいったピエロがいましたが、彼はなんだったんでしょう?
過去のエピソード
最近でこそテレビでも露出が増えましたが、一般的にはあまり有名ではない人です。
でも、やはり凄まじいエピソードの持ち主です。
凍傷で足の指を失う
2005年のシブリン北壁を登頂した際、装備選択のミス(用具を増やしたぶん食料を減らした)が影響して、凍傷になりました。
結果、右足の指を3本失われました。
先鋭的なクライマーでも、指を失うと同時に、最前線から一歩下がった登山しか出来なくなるらしいですが、彼はいまでもトップを走り続けています。
服部文祥さんを救出
サバイバル登山家の服部文祥さんが、テレビ取材(「情熱大陸」)を受ける条件に、
「俺の登山の邪魔にならないヤツなら同行してもいい。たとえば平出和也」
と提案したので、服部文祥さんの登山にカメラマンとして同行することになりました。
しかし、途中で服部文祥さんが、滝壺に30m滑落して、肋骨を3本骨折してしまいます。
平出さんはなんとか1人で救助し、なんとか2人で下山することができました。
荷物を全部預けて、手ぶらで歩く服部文祥さんが、涙ながらに礼を言うシーンがエンディングでした。
「あのとき、カメラマンが平出じゃなかったら、死んでいた」
と、後に著書で語っています。
ピオレドール賞2回
日本人で唯一、カメット南東稜とシスパーレ北東壁の登攀で、2回ピオレドール賞を獲得しています。
ピオレドールは、フランス語で「金のピッケル」と言う意味。「登山界のアカデミー賞」の異名を持つ。
毎年必ず選ばれる賞ではないのに、2度も選ばれるというのはすごいです。
昔からある賞ではないので、過去の登山家との比較にはなりませんが。
ヘリ墜落事故
ドイツ人パートナーとアマ・ダブラムの新ルートを登っていたときに、身動きが取れなくなり、救助を要請しました。
そのとき、2人とも救助されたのですが、途中でヘリが一度墜落してしまい、パイロットが亡くなってしまいました。
登山を続けていいものか、かなりの葛藤があったそうですが、亡くなったパイロットの家族に
「新しい命をもらったと思って、これからも頑張ってください」
と言われて登山を続行しているそうです。
パートナー谷口けいさんの死
長年、登山のパートナーだった谷口けいさんが、北海道黒岳で滑落死してしまいました。
当時、北海道の登山者の間では、かなりの話題になりました。
さて、その谷口けいさんと、シスパーレ北東壁に何度かアタックして失敗していました。
なので、2017年に登頂したシスパーレ北東壁は、彼にとっては「故人との約束を叶える」という意味でも、大きなものだったのです。
ちなみに、谷口けいさんについては、素晴らしい本があります。
魅力その1 縄跳びで高度順応
平出さんの番組(情熱大陸がけっこう多い)を観ると、いつも、
「高度順応は縄跳びが一番」
などと言って、なぜか裸で縄跳びしているシーンがあります。
「縄跳びって、そうなのか~」
と思っていたけど、男2人(中島健郎)で縄跳びしているのは、下山後なので、高度順応関係ないです。
きっと、縄跳びが大好きなんだと思います。
魅力その2 いつも明るい
この人、歩いていても、テントの中でも、とても明るいです。
トラブルがあっても、あまりクヨクヨしません。
パートナーの中島健郎が年下だからか、常に元気で兄貴肌で、
「人を引っ張っていくタイプ」
のように見えます。
魅力その3 素人と言われても怒らない
以前何かの番組で話していましたが、普段仕事している登山用品店でのエピソードが面白かったです。
山道具を買いに来たお客さんにアドバイスしていたら、お客さんの気に触ったことがあったらしく、
「お前、山やってるのか! 素人は黙ってろ!」
みたいなことを言われたそうです。彼は、
「いや、まあ、多少は・・・」
と答えたそうです。
私のような小さい人間なら、「なにを!」と怒って自慢しそうなものです。
すごい人ほど、下手に出るものなんですね。
魅力その4 映像が素晴らしい
カメラはもちろん、ドローンも駆使して映像を撮るプロです。
スーパーおじいちゃん三浦雄一郎、8,000m峰14座登頂の竹内洋岳、おまけに(登山家じゃないけど)田中陽希などのハードな撮影には、カメラマンとして参加しています。
ただ登る彼らを、重い機材を持って撮影するわけで、彼らより実力が上じゃないといけません。
「本人より、カメラマンのほうが大変そうだ」
と思う人も多いでしょうが、それが出来る人は少ないです。
彼は、ヘルメットに常にカメラを付けて撮影しているので、とても臨場感溢れる映像を観せてくれます。
特に、中島健郎も優れたカメラマンなので、2人で組んだときの映像は、お互いをよく写していて素晴らしいと思います。
シスパーレ北東壁ルートの映像について
登山映像マニアの私ですが、NHKで放送された
「銀嶺の空白地帯に挑む~カラコルム・シスパーレ~」
は、過去に例をみない傑作だと思います。
- 中島健郎が氷塊を落としてしまい、下にいた平出さんが危機を察知して避けるシーン
- 雪崩が上から迫ってくるところを避けるシーン
- チリ雪崩に巻き込まれるシーン
- 中島健郎が登攀中に滑落、確保されるシーン
などは、何度観ても飽きません。
何度も何度も録画したものを観ていますが、じつは、ブルーレイで発売されているものは少し違います。
番組ではカットされていた、下山の2日間が追加されているのです。
平出さんが下山した直後、
「僕たちには、もう1ミリも残っていない」
と語っていましたが、その理由がわかります。
「下山というけど、登りを2回やっているようなもんだ」
と、2人は話していました。
テレビを観た人も、まさか下山の様子が収録されているとは知らないでしょう。
私は知らなかったので驚きでした。
もっと宣伝してよ、NHKさん。
次なる目標
平出さんと中島健郎は、次の目標を
K2(8,611m)西壁
に定めたようです。
世界最難関と言われるK2の未踏ルート。偵察の様子が「情熱大陸」で放送されていました。
「ざっと見たところ、行けて半分」
と話していましたが、これからどうなるでしょうか?
とても楽しみです。