こんにちは、寝袋!です。
今回は、数年前、私がある遭難寸前の登山者を、電話で誘導した出来事について、お話したいと思います。
これから、登山者の状況、装備、現在地の情報などを書いていきます。
もしあなただったら、どういう方法で、どこへ誘導するか、考えてみてください。
ちなみに私は、一応無事に誘導できたのですが、いくつも失敗をしてしまいました。
あとで冷静に考えれば、
「どうして、あれが出来なかった?」
とわかるのに、その時の私には出来なかったのです。
おそらく、冷静さを欠いていたのでしょう。
みなさんもよかったら、考えてみてください。
当時の状況
それでは、当時の状況を、お話していきます。
北海道の山を縦走していた、知り合いの登山者(男性1名)から、私を頼って電話が入りました。
電話の内容
午後2時頃だったと思います。疲れ切った弱々しい声で、彼は語りました。
- 縦走始めてから体調が悪く、テントで3日間停滞していた。
- 回復を待ったが、原因不明で食欲が無い。
- 2日ほどほとんど食べていないし、これではまずいのでエスケープして下山しているところだ。
- 今、目の前に分岐がある。
- どちらへ行けばいい?
という内容でした。おいおい、かなりヤバそうな状況です。
登山者のこと
彼は夏から冬まで、日本中の山々を歩いてきたベテランです。
テント泊縦走が好きで、バリエーションルートで何度かビバーク経験もしていて、経験は豊富です。
しかし、今回はあろうことか、所持していた地形図の中に、彼がエスケープしようとしたところが抜けていたのでした。
頭の中で、そのエスケープルートは知ってはいたので、
「なんとかわかるだろう」
と、そちらへエスケープしたということでした。
現在地
彼がエスケープしたところは、今では通行止めでまったく車が通らない林道です。
矢印の方向から下山して、左右に分かれる分岐が出てきたので、迷っているらしい。
「どちらへ行けばいい?」
とりあえず、
「今、地図で調べて、こちらからかけ直すから、それまで動かないで待っていて欲しい」
と伝えました。携帯の電池は十分ありそうですが、電波がどこまで通じるかわからなかったので、動くなとお願いしました。
現在地の推理
まず、私はそこへ行ったことがありません。
地図だけが頼りです。
私がまず考えたのは、
「彼がA地点にいるのか、B地点にいるのか」
ということです。彼いわく、
「左右に分かれているが、どちらも見える範囲の距離では先がわからない。左の道は少しずつ左へ折れていっている」
ということでした。これは、どちらにも当てはまってしまいます。
「今まで歩いてきて、左へ分岐(破線の登山道)はあったのか?」
と聞くと、なかったといいます。
では、今いる場所がA地点なのか?
それともこの破線は、もうすでに道がわからないくらい、消えてしまっていて、今はB地点にいるのでしょうか?
登山者の装備
登山者は、縦走途中でしたから、テント泊の装備は持っていますし、食料も十分に持っていました。
GPS端末は持っていますが、彼のGPSは歩く場所の地図を予めインストールするタイプなので、現在地は示していますが、空白の画面が写っているだけです。
水は少ないですが、携帯浄水器を持っているので、ある程度の水があれば飲み水にも困りません。
私のとった行動
私の考え
- B地点から北へ向かうと、最短8kmほどで一般道へ出れそう(『誘導候補①』)だが、林道の分岐が多く、電話でそれをすべて伝えるのは難しい。
- B地点から南西へ向かうと、25km以上の距離があるが、一本道で一般道へ出られるようだ。
- テント装備があるから、長くても、そちら『誘導候補②』へ向かうべきだ。
私が伝えた誘導
「まず、ここは左へ行って欲しい。
もし道が消えていくようなら(A地点の可能性)、戻って右へ進んで欲しい。
その場合は一度今の場所で連絡を入れること。
携帯電話は切っておいて、時々こちらに連絡を入れて欲しい。
おそらく25km以上あるが、迷う可能性は低いので頑張って欲しい」
と、伝えました。
結果
それから、夜が来て、翌日遅くになって、
「ようやく林道から出ることが出来た」
と連絡が入りました。
いよいよ救助要請のことも考え始めていた頃で、ほっと胸をなでおろしました。
頭の中で「彼が林道で倒れている姿」や「無理に危険な場所を通ろうとして、滑落している姿」が離れない夜でした。
結果的に、彼はB地点にいたらしく、その後は延々と25km(以上?)の林道を歩いたそうです。
林道はところどころ橋も落ちていて(台風の影響)、そのたびに場所を探して、渡渉したということでした。
1日目の夜は、林道のど真ん中でテントを張ったそうです。
「もう、何が何やら覚えていない・・・」
ともらしていました。
その後病院へ行ったのですが、急性の胃潰瘍で、食べ物を受け付けなくなっていたそうです。
あとで考えた正解
無事に彼が帰ってきて安心しましたが、それからしばらく、頭の中で考えていたのが、
「もっといい方法が、あったのではないか?」
ということでした。
まず真っ先に思いついたのが、GPSです。
GPSに地図が入っていなくても、緯度経度はわかるはずだから、現在地の緯度経度を見させればよかったのです。
そうすれば、今、彼がどこにいるか、こちらでは地図で確実にわかったのに。
(彼も、まったくそのことには気づかなかったと、反省していました。いかに2人とも冷静ではなかったかということです。)
B地点と判明したとしても、いずれにしろ25km歩かせたとは思いますが、確信をもって導けたはずです。
今回は、たまたま推理(直感)が当たったので、間違えずに誘導できただけでしょう。
あとは、こちらから伝えたいことがあった場合に備えて、例えば、
「今晩8時と明朝8時には、携帯の電源を5分間だけONにしてくれ」
と言えば良かったのかな?とも思っています。
さらにいえば、あの時点で有無を言わさず救助を要請したほうが、よかったのかとも思っています。
どうなのでしょう?
あなただったら、どうしましたか?