こんにちは、寝袋!です。
あなたは、山で幻聴を聴いたことがありますか?
「幻聴って、遭難した人が聴くアレでしょ?」
「いやいや、私遭難したことないし」
と思うでしょう。
ところが、じつは山で幻聴を聴いた事がある人って、案外多いんですよ?
もちろん私も含めて、遭難したときに聴いたものではありません。
あなたもそのうち、山で幻聴を聴くかもしれません。
私と知人の幻聴体験、読んでみてください。
「ああ、ありそう・・・」
そう思っていれば、いざ聴こえてもパニックにならずにすみますよ。
目次
遭難したときにおこる幻聴と幻覚
遭難のドキュメント本などを読んでいると、遭難者がよく経験するのが、
幻聴と幻覚
です。
- 幻覚=そこにない物や人を見てしまう
- 幻聴=鳴ってもいない音や声を聴いてしまう
ことですね。
とくに幻覚は、いないはずの人と会話したり、そこにないはずの奇想天外なものを見たり、すごいみたいです。
山の中を電車が走っていたり、漫画のキャラクターが居たり・・・。
しかも、
「それがおかしいという事に気付かない」
ことが、もっとも恐ろしいですね。
まさに極限状態といえるでしょう。
そんな事態には、おちいることがないようにしたいものです。
山で幻聴が聴こえるってホント?
いっぽう、幻聴はといいますと、幻覚ほど極限状態とはかぎらず、案外ひんぱんに起こります。
ちょっと寝不足だったり、疲れていたり、そんな程度でも起きてしまうようです。
私は一般生活では経験ありませんが、山では時々聴いたことがあります。
私の経験と、神戸の知人Sさんの経験、2つをお話します。
私の経験談
誰もいないテント場で
北海道のトムラウシ山の山頂直下に「南沼テント指定地」があります。
大雪山系を、5泊6日で縦走している途中のことでした。
夏の時期は賑わうこのテント場ですが、その時期はまだ人は少なく、どうやら私1人のようでした。
道中もずっと1人でしたから、
「あーあ、夜も1人か」
と、なんだか寂しい気分でした。
「あ、誰か来た!」
明るいうちに夕食を済ませて、寝袋の中に潜り込みました。
「明日は2時には起きて準備しよう」
などと考えながら過ごしていました。
すると、ガヤガヤと人の声がしてきました。
「あ、誰か来たかな?」
方向と時間帯から推測すると、おそらくトムラウシ山の登山口から登ってきたようです。
会話している声を聴いていると、どうやら男女のペアのようです。
挨拶しておこうかな・・・と、さりげなくテントから出てみると、なんと誰もいません。
「あれ? もしかして気のせい?」
そこは北沼という雪渓から、雪解け水がジャバジャバ流れていましたから、水音を勘違いしたようです。
聞き間違いじゃなかった!あれ?
テントに戻り、また寝袋に入りました。
そしてまた考え事をしていると、また人の声がするのです。
「なんだ、やっぱりいたのか。意外と遠くから声って響くから、まだテント場に来てなかったんだな!」
と、また出てみたのですが、やはり誰もいなかったのです。
縦走3日目で、たしかに疲れてはいましたが、
「これが幻聴ってやつ?」
と驚きました。
じつはいまだに(ありえないのですが)「本当は誰か通ったのでは?」と信じられない気持ちもあります。
Sさんの経験談
Sさんは神戸の男性です。
バイクで北海道へやってきて、登山口までもバイクで行くというたくましい人です。
ヤブの向こうから声が
そのSさん、年は違いますが、(私が幻聴を聴いたときと)同じルートを歩いていた時のことです。
その日は1日中、背丈より高いヤブの中をかき分けるように進むコースでした。
登山道はハッキリしているのですが、両側から伸びたササが覆いかぶさってきて、大変だったそうです。
双子池というテント指定地を目指していたのですが、予定より遅れて、やや薄暗くなってしまいました。
テント指定地を遠くに見下ろせる場所まで来て、
「ここを下ればテント場だ!」
とホッとしたそうです。
すると、下の方から、人の声が響いてきたのです。
どう聴いても、男女3名以上はいるらしく、しかも「声の感じからすると20代」と感じたそうです。
「よかった一人じゃなくて」
Sさんは疲れていましたし、かなり不安だったらしく、
「ああ、1人じゃないのは心強い。ヒグマ出そうな場所だし」
と、安心しました。
しかも、なんとなくテント場あたりに、赤いウェアが動いているのが見えたそうです。
あれ?彼らはどこいった?
声は、それからも時々聴こえてきて、
「ずいぶん賑やかだな。あまりうるさいと嫌だけど」
とかえって心配になるくらいだったということです。
ところが、テント指定地には誰もいませんでした。
そこはやや湿った場所ですが、新しい足跡もありません。
「え?まじ?」
Sさんはそこから続く登りの登山道を見上げましたが、そこにも人影はありませんでした。
Sさんはテントを設営し、バタンと倒れ込むように寝たそうです。
そして、私と同じで、いまだに、
「あそこには間違いなく人は居た。どこへ行ってしまったのだろう?」
という思いが消えないそうです。
人は聴きたいものを聴くのか?
私もSさんも、疲れてはいましたが、極限状態ではありません。
もちろん、遭難とはほど遠く、
- 疲れて
- 1人で寂しく
- 不安感があった
だけです。
それなのに、2人ともこのような幻聴を聴いたのです。
私はアルパインクライマーたちの体験談を読むのが好きですが、あの人達は、
- 酸素が薄く
- 極限の疲労状態
で、幻覚や幻聴を体験するようです。
「あ、やっぱり来たな」
と、わかるらしいですよ。
私もSさんも、幻聴を聴いたものの、パニックになるほど追い込まれてはいませんでした。
「あれ?」
と思う程度で済んだからラッキーでした。
「ここにいた人たちは、どうしてここを去ったのだろう?」
「ここには何か危険が?」
「探したほうがいいかな?」
などと、妄想の世界に入らずに良かったと思います。
山での道迷いでもそうなのですが、人間ってやつは、
- 聴きたいものを聴き
- 見たいものを見る
困った性質があるようです。
ちょっとした「幻聴」は、誰の身にも起きると思っていたほうが、いいのかもしれませんね。
新田次郎の短編集「先導者・赤い雪崩」は読んだことありますか?
このなかの「先導者」という話は、幻聴が表現されています。
ネタバレになるので書けませんが、
「人はここまで幻聴を聴くのか」
とゾッとします。