【北海道登山】地元民が行う実際のヒグマ対策(熊鈴、熊撃退スプレー)




こんにちは、寝袋!です。

本州からの登山者の方々が、一番心配するのが、やはりヒグマに関してです。

たしかにヒグマは本州にはいませんし、本州の人にとっては未知の怖い存在でしょうね。

ただ、

「ちゃんと対策と準備をしていれば、そんなに怖がることもないのに・・・」

と、いつももったいなく思っています。

必要以上に怖がることは、北海道の登山をつまらなくしてしまうからです。

そういう私ももちろんヒグマは怖かったですし、攻撃的な動物だと思っていました。

みなさんと一緒だったのです。

今はヒグマのことを、必要以上には怖がっていません。

それに比例して、より北海道の山を楽しめるようになりました。

ヒグマについて、北海道登山愛好者の目線でお伝えしたいと思います。

よく言われるヒグマ対策は本当に正しいのでしょうか?

地元民は実際どんなヒグマ対策をしているのでしょうか?

ヒグマと人間の事件

ヒグマが人間を襲った事件で有名なのが、以下の2件です。

ネットで調べるとこの2件が出てきますし、この2件のインパクトがあまりに凄いために、

「ああ、ヒグマってなんて恐ろしい動物なんだろう」

と、第一印象を持ってしまうのです。

でも、ヒグマのことを「知り、出会い、感じる」ことを繰り返した、今ならわかります。

どちらも、

ヒグマの生態を知っていれば、事件にならなかった

のではないかと。

三毛別羆事件(さんけべつ)

三毛別羆事件
1915年(大正4年)12月9日から12月14日にかけて、北海道苫前郡苫前村三毛別(現:苫前町三渓)六線沢で発生した、クマの獣害としては日本史上最悪の被害を出した事件。
エゾヒグマが数度にわたり民家を襲い、開拓民7名が死亡、3名が重傷を負った。事件を受けて討伐隊が組織され、問題の熊が射殺されたことで事態は終息した。(wikipediaより)

もっと詳細を知りたい人は、こちらを読んでください。

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

福岡大ワンゲル事件
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件とは、1970年(昭和45年)7月に北海道日高郡静内町(現・新ひだか町静内高見)の日高山脈のカムイエクウチカウシ山で発生した獣害事件。若い雌のヒグマが登山中の福岡大学のワンダーフォーゲル同好会(現在はワンダーフォーゲル部に昇格)会員を襲い、死者3名を出した。(wikipediaより)

事件の詳細はこちらで詳しく書いています。

「なぜ?」カムイエクウチカウシ山福岡大ワンゲル部ヒグマ事件の全貌

2019年8月5日

これらの事件を頭において

これらの事件を読んで知ってほしいのは、

「ヒグマに対する接し方を間違うと、怖いですよ」

ということで、

「ヒグマが怖い」

で終わってほしくありません。

以下に書いていくことを読んでもらえれば、ヒグマが本来そんな動物ではないことを、わかっていただけると思います。

北海道民が知っているヒグマの実態

ヒグマはほとんど植物を食べています

ヒグマは雑食性ですが、ほとんど植物や木の実を食べています。

ヒグマの糞を見かけると、それがよくわかります。

鮭を食べるイメージが強いですが、じつは違うのです。

鮭は、年に一回のご馳走みたいなものなんです。

ヒグマは、攻撃的に人間を襲ってくるような動物ではありません。

ヒグマに会ったことのない北海道民は多い

北海道にはあちこちにヒグマが出没して、

北海道民なら誰でも会ったことがある

というふうに思われていて、驚きます。

農村部や山間部に住んでいる人でも、会ったことのない人のほうが、圧倒的に多いのです。

街の人になると、ほぼゼロと思っていいくらいです。

ヒグマの糞を見たり、足跡を見たりしたことがある人は、たまにいます。

彼らの多くは、本州の人と同じように、ヒグマは人を襲ってくるものだと考えています。

そして、口々に

「ヒグマは怖い」

と言いふらすのです。

ヒグマの巣と呼ばれるテント場にて

ヒグマに会ったことのない登山者は多い

登山者になるとどうでしょう。

じつは、登山者でも会ったことがある人は、とても少ないのです。

私は3回会いましたが、それを話すとけっこうビックリされます。

登山者は、かなりヒグマの生態には知識があり、ヒグマは滅多に襲ってこないということは知っています。

山菜採りは危険なのはどうして?

山菜採りの人が、よくヒグマに遭遇して襲われています。

登山では襲われないのに、どうして山菜採りは襲われるのか?

  • じっとしている

山菜採りの人は、じっと座り込んで動きが少ないので、熊鈴も鳴らないし、気配も少ないからです。

  • 同じ獲物を狙っている

先ほども書いたように、ヒグマは山菜が主食です。

自分の食べ物がある場所に侵入して、ずっと獲物を採り続けている人間は、敵対視されてもおかしくないですね。

ヒグマに会わないために

まずはこの動画を

まずはこの動画を見てください。札幌市広報部の動画です。

いかにヒグマに自分の存在を知らせることが重要か、わかってもらえると思います。

ヒグマは、人間が怖くて怖くて仕方がないのです。

もし戦えばあちらが圧倒的に有利なのに、無用な危険は避けようと一生懸命です。

居場所を知らせる

自分の存在を知らせるためには、いくつかの方法があります。

  • 熊鈴

やはり一番手軽で、音を出し続けてくれるのが熊鈴です。

右は鈴形、左はカウベル形

写真は私が愛用している2つです。

右はモンベル製の小型の熊鈴です。

チリーンチリーンと、小さいのによく響く音を出します。

よく響くので、昔モンベルの社員に、わざわざ質問したことがあります。

小さくてもよく通る音を出すように指示されて、かなりこだわって作った熊鈴らしいですよ。

左はカウベル形の大きな熊鈴。音はカウベル形のほうが大きいと思います。

沢筋を登っていくような場合、

沢の水音で鈴の音がかき消されてしまうので、大きな物を使ったほうがいい

と考えて使い分けています。

愛用の笛

笛はとても効果があると思います。

ただ、勝手に音が出るわけではないので、意識していないと無音のまま歩く時間が多くなるので、注意が必要です。

  • その他の音

私は他にも、ストック同士をぶつけて音を出したりもしますし、時々大声で

「ヤッホーー」

などと叫ぶこともあります。

声をだすのは結構疲れるので、やはり笛がいいですね。

  • 匂い

ヒグマは犬より遥かに鼻がいいです。

だから、タバコや蚊取り線香などの匂いは、嫌がると言われています。

逆に言えば、香水などは絶対につけてはいけません。

ヒグマが大好きな甘~い匂いのものはとくに。

食べ物の匂いに注意

当然、登山者が持っている食べ物の匂いは、すぐに嗅ぎ分けてしまいます。

ビニール袋やジップロックなどは無意味です。

だから、ヒグマに人間の持つ食べ物の味を教えてはいけないのです。

正体のわからない匂いが=美味しい食べ物の匂い

と知られてはいけないのです。

知ったヒグマは、人間を「美味しい匂い発生機」と認識してしまいます。

ヒグマに出会ってしまったら

これだけ対策をしても、やっぱりヒグマに出会ってしまうことはあります。

私も3回会ってしまいましたが、私の感想を言わせてもらえば、

「ヒグマが食べ物か何かに、夢中になってしまっているとき」

に、警戒心が薄れて、接近を許してしまうのではないかと思います。

出会わないようにするのが先決ですが、出会ってしまったあとのことも一応頭において山に入ってください。

するどいツメ

ヒグマに会ってやってはいけないこと

ヒグマに出会ったら、まずは「やってはいけないこと」を意識しなければいけません。

叫ぶ

ギャーギャー甲高い声を出すのはいけません。

ヒグマじゃなくたって、そういう人間をぶん殴って、黙らせたい気持ちになったことがあるはずです。

あなたの恐怖の叫びは、ヒグマには戦いの雄叫びに聴こえているかもしれません。

逃げる

ヒグマは背中を見せて逃げるものを、追いかけてしまう習性があります。

「ついつい」追いかけてしまうらしいです。

近づく

「そんなアホな」

と思うかもしれませんが、じつは近づいてしまう人がけっこういるのです。

写真撮ってインスタ映えってやつですか?

獲物を奪い返す

ヒグマはどういう経緯にしろ「一度自分が手にしたら自分の所有物」というジャイアン的な性格です。

仮に、ザックの中のパンツが勝負パンツでも、スッパリあきらめましょう。

ヒグマに会ったらやるべきこと

「やってはいけないこと」がクリアできたら、次は「やるべきこと」です。

でもおそらく、この時点でヒグマは立ち去る&逃げ去ることが多いと思います。

私の場合は3回中2回はそうでした。

何か行動する時間すらなく、事件は解決していたのです。

何もしないことが、彼らが逃げるための時間的余裕を作り出すのです。

じっとしている&後ずさる

まだヒグマが逃げていなければ、さらに様子を見ながら、ゆっくりと距離を取りましょう。

そう「背中を見せずに」ですよ。

可能なら、ヒグマがどちらへ逃げていくか、行方を確認できればベストだと思います。

木の上のヒグマ

例えばですが、木の上に逃げているのに気付かずに、下を通りたくないですよね。

私の場合、このあと、木の下を通過できずに、降りてきて崖下に逃げていくのを待ちました。

熊撃退スプレーの準備

持っているなら、熊撃退スプレーをそっとホルスターから取り出して、安全装置を外しておいてもいいです。

ヒグマがその場を離れられない理由(子供、獲物)がある場合は、こちらにダッシュ&ストップで脅かしてくる場合もあるらしいです。

その時に間違って発射しないように。射程は、長いものでも10mしかないですからね。

もしヒグマがずっと逃げなかったら

登りだったら

どうしましょう? 待つか? 帰るか?

「帰りましょう」と言うのが正解でしょうが、帰りたくない気持ちもわかります。

出来ることは、じっと待って、ヒグマが去ってくれることを祈るのみです。

下りだったら

これは困りますね。違うルートで下山できればいいけれど、そんな状況は少ないでしょう。

距離を保ちつつ、じっと居なくなるのを待つしかないと思います。

間違ってもスプレー片手に突撃しないように。

知床の特殊事情

知床半島はやや事情が違います。

知床のヒグマは、人間を見ても逃げないくらい、人間の存在に慣れてしまっているのです。

例えば羅臼岳などは、登山道にヒグマが昼寝してて、通れないケースも珍しくないのです。

すぐ横を通っても、何事もなく通過できる場合もあります。

私は逆にこの状況がとても怖くて、

いつか事故が起きてしまうのでは?

と考えています。

熊撃退スプレーの使い方

なんらかの原因でヒグマに襲われそうになった場合、我々一般人がヒグマと戦う手段はありません。

最後の手段「熊撃退スプレー」を吹き掛けて、退散させることしかできません。

カウンターアソールトストロンガー

実際に使用する可能性は低くても「最後のお守り」として、安心感のために持って行く人は多いです。

私は今では山に持っていきませんが「持っている安心感」を否定するつもりはありません。

安心できて、それで北海道の山を楽しんでもらえれば、ベストなのですから。

使用方法を確認しておく

白い安全装置

熊撃退スプレーは人間にとっても非常に危険です

昔、旅館(うちじゃないよ)内で間違って発射してしまい、20人以上が病院送りになった事件がありました。

だから、安全装置が付いています。

上の写真の白い樹脂製のものがそうです。

指で引くと簡単にとれる

発射OK

これで黒いレバーを押し下げると、とてつもなく辛い唐辛子成分が発射されるというわけですね。

安物だと5m、お高いものだと10mほどの射程距離を持っています。

私は発射したことはありませんが、5mではちょっと接近されすぎて手遅れなのではと思います。

安全装置はまたはめることができるので、一度練習しておくべきです。

いつでも出せるように準備

熊撃退スプレーを発射するのは緊急時です。

ザックの雨蓋から取り出している余裕はないと思っていいでしょう。

ホルスター型の専用ポシェットが付属しているものを選んだほうが便利です

いつでも取り出せるようにしておかないと、持っている意味がありませんから。

使用期限を過ぎた熊スプレーの効果を実際に撃ってみたら

クマ対策用アイテムの紹介


大きな音が出せて、雨で濡れても使える強力ホイッスル。

【注意】クマ撃退スプレーは飛行機で運べません

クマ撃退スプレーは、飛行機で運ぶことが不可能です。

預け荷物、機内持ち込み、両方が禁止されています。

飛行機で北海道登山する注意点
クマ撃退スプレー以外にも、飛行機で登山しに来る場合、注意点がいくつかあります。

まとめて詳しく書いてありますので、読んでもらえると参考になるかと思います。

【北海道登山】飛行機に乗せられない登山道具・注意点・ノウハウ

2019年3月1日

まとめ

ヒグマは大きくて力がある動物ですから、怖がっている登山者は多いでしょう。

でも、

  • 性質を良く知り
  • 出会わないような対策をとり
  • 出会っても間違った行動をとらない
  • そして万が一のためのアイテムを持つ

と、ヒグマのことを必要以上に恐れる必要はないのです。

故 星野道夫さんはこんな言葉を残しました。

「旅をする木」より
アラスカの自然を旅していると、たとえ出会わなくてもいつもどこかでクマの存在を意識する。今の世の中で、それはなんと贅沢なことなのだろう。(中略)もしこの土地から熊が消え、野営の夜、何も恐れずに眠ることが出来るなら、それはなんとつまらぬ自然なのだろう

ヒグマのことを畏れつつも怖れず。

ヒグマがいるから怖いんじゃなく、ヒグマがいるから素晴らしいと感じて下さい。

ヒグマが生活する素晴らしい北海道の山、楽しんでいただきたいと思います。

 

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