こんにちは、寝袋!です。
山では、いろいろな登山者に出会います。
迷惑な人は困りますが、みなさん個性的で面白い人が多いと思います。
もしかすると、
一般社会では思いっきり発揮できない個性
が、思う存分羽根を伸ばしているのかもしれません。
だから山で出会う人は面白い?
今回は、私が出会った「ご夫婦2名で寝袋3つ持ってきた登山者」をご紹介します。
ある避難小屋で
1泊2日で登る、ある山の避難小屋での出来事です。
その日は天気が悪くて、テント泊をやめて避難小屋に入りました。
宿泊者は私の他には、1組のご夫婦がいるだけでした。
とても仲が良いご夫婦
「けっこう荒れそうですね~」
「明日は晴れてくれればいいんだけど・・・」
なんて軽く言葉を交わしながら、薄いガラス窓から見える空の色を気にしていました。
あまり話題もなくて、それくらいしか話すことがなかったのを覚えています。
ご夫婦は埼玉県からいらして、毎年1ヶ月ほど北海道の山々を登ったり観光したりされていました。
寝泊まりはハイエースの車中泊で済ませて、浮いた宿泊代を現地の食事で使うということでした。
とても仲が良くて、終始にこやかでした。
寝床の準備を始めたら
その日はどうやら3人以外には誰も来ないようでしたから、小屋の両脇に別れて、お互いに場所取りをしました。
マットを敷いて寝る場所を決めて、荷物も広げ始めたのです。
すると、なにやらご夫婦が声を上げました。
奥様「ええーー? 寝袋はお互いに持とうと言ったでしょ?」
旦那「荷物多いから、オレはお前の分も持ってきてやったんだぞ?」
奥様「こんなところまで、無駄な荷物持ってきちゃったわね(笑) ご苦労さま」
どうやら、旦那さんが厳しい行程に気を使って、奥様の寝袋も持ってきてしまったのです。
奥様「3人分あるんだから、あなた2枚重ねしたら? 暑そうだけど(笑)」
苦労した旦那さんはともかく、奥様は楽しそうでした。
夕食の時間になりました
その後、どんどん薄暗くなってきて、18時ごろでしょうか。
私たちはそれぞれ食事の準備を始めました。
ゴウゴウと外の風の音はしましたが、静かな小屋でした。
その静けさを破ったのは、またもや奥様の声でした。
奥様「ええーー? あなた食料持ってきてないの?」
旦那「オレはガスは持ってきたけど、食料はお前が持ってくれると思ってたぞ?」
奥様「たしかにガスはあなただけど、食料はお互いに持つに決まってるでしょ?」
旦那「だ・か・ら、オレはお前の寝袋も積んでいっぱいなんだよ!(怒)」
奥様「寝袋はあなた、勝手に持ってきたんじゃない! お互いに持つのは基本でしょ?(怒)」
ここでやめておけばいいのに、奥様は追撃。
奥様「いらない寝袋持ってきて食料持たないって、ほんとバカじゃないの?」
他に、私しかいない悲しさ。
犬でも食わない夫婦喧嘩を、私が食わねばならない始末に。
「あのー、私、アルファ米もラーメンも予備がありますから、お好きなほう提供しますよ」
忘れられない出会いでした
ご夫婦は何度も申し訳ないと言って、あやまりながら、アルファ米(翌朝のと2食分)を受け取ってくれました。
「どうぞ、遠慮なく」
あなた達だけのためじゃないんです。
私だって山でそんな話、聴きたくないですから(苦笑)
今回は「旦那さんのほうに落ち度があった」という結論になったらしく、事件は解決しました。
次の日、私たちは3人で山頂を目指し、そのまま一緒に下山しました。
実は私、そのおかげでオプションとして計画していた、1日追加のルートを行けなかったんですが、それはそれでよかったかな。
ご夫婦はとても和やかで面白い方々で、道中を楽しくしてくれましたから。
また、ご夫婦が地元に帰られてから、ご丁寧なお手紙もいただきました。
良い思い出ですが、あの時予備の食料持ってなかったら、どんな雰囲気になっただろうと、今でも時々考えることがあります。