こんにちは、寝袋!です。
昔の人は、山岳部とか山岳会とか、グループを作って山に登っている人が多かったです。
でも、今はそういう時代ではありません。
みんな友達や彼氏彼女と、少人数で登っていますし、単独行だって当たり前になりました。
どの世界でもスタイルは移り変わっていくものでしょうし、それはそれでいいのです。
ただ、スタイルの変化によって「使われなくなった」「消えてしまった」登山用語も多いです。
今後も復活することはないでしょうから、今のうちに思い出して書きだしてみました。
「知らなくても問題なし。知ってても偉いわけでもない」
むしろ、
「いまだに使ってたらドン引き」(?)
という登山用語集です。
オカン
オカンとは、お母さんのことでも、酒を温めることでもありません。
テントを使わず露営する、いわゆる「ビバーク」のことなんです。
ただ、「ビバーク」とは厳密には違いまして、そのあたり解説しますね。
ビバークは緊急的にツエルトを張ったり、穴(雪洞)を掘ったりして、夜を過ごします。
でも、「オカン」はツエルトも何も使いません。
着の身着のまま、ただ野外に身を晒して寝ることを言うんです。
意味合いも少し違いまして、
ビバークは「緊急時にしかたなく」という感じですが、オカンは「あえてやる」場合もある
んですよね。
ビバーク | ツエルト等を使用 | 緊急時に仕方がなく |
オカン | 着の身着のまま | 緊急時も、あえてやる場合も |
「ツエルトなんていらねえ、このままオカンで寝るべ~」
地面にゴロリと横になった先輩に、後輩は何を思うでしょう?
知らない人が聞いたら「山に来てまでお母さん? と寝たいってこと?」と勘違いしそうですね。
バーナーでお湯を沸かして、先輩にお酒を差し出す後輩がいるかも!
オロク
不幸にも山で亡くなってしまった登山者の遺体のことを「オロク」といいます。
「南無阿弥陀仏」の6文字を意味して「オロクジ」と言っていたのが「オロク」になったということです。
刑事ドラマでは死体(死者)のことを「ホトケ」と言いますが、似た思いなんでしょうね。
「エベレストでは、オロクは放置されたままなんでってね」
などと言うと、ビックリされるので使わないのが身のためです。
カモシカ(山行)
夜通し歩き続けて、長距離を移動する山行スタイルのことを「カモシカ(山行)」と言います。
早朝出発でも、暗くなってからも歩いていることでもなくて「夜通し」です。
ところが「カモシカは夜行性」というわけでもないらしいのです。
では、どうして「カモシカ」と言うのでしょうか?
私が調べたところ、カモシカは崖でも平気で歩き、切り株や岩に腰掛けて寝るようなことから、そういうイメージになったのかもしれません。
「カモシカのような脚」とも言いますから、
「山でも長距離をらくらく移動する人」=「カモシカ」
というイメージだからかもしれません。
間違っても「カモシカ」などと言わず、「ナイトハイク」とオシャレに言いましょう。
共装と個装
これはたとえ知らなくても、みなさん意味はわかりますよね。
「共同装備」と「個人装備」のことです。
共同装備とはパーティーみんなで使う道具で、個人装備とは各個人が使う道具です。
例えば、テントは「共装」で寝袋は「個装」ですね。
最近は各個人それぞれが、テントや装備を一式持っていくことが多いでしょう?
「すべて個人装備」という時代になってきたのです。
CLとSL
これも意味を知ればわかることですが、一般には使うことは少ないでしょう。
CLとはチーフリーダー、SLとはサブリーダーのことです。
「船頭多くして船は進まず」
団体で行動する時は、リーダーを決めておくことが安全のためにも大切でした。
ですから、昔はよく聞く言葉でした。
今では、山で意見が違っても、少人数なのでなんとかなりますからね。
あなたは、ペアで山へ行くとき、リーダーですか? サブリーダーですか?(笑)
たとえば山岳部では、部長がCLとは限らないものです。OBがCLだったり、次期部長がCLだったりするんですよ。
トカゲ
昼寝のことです。
爬虫類が岩の上でジーッと動かない様子からついたのですが、一般的には「カメの甲羅干し」のほうが通じるような気がします。
なぜ山の世界ではトカゲだったのでしょう?
山にはカメがいないから・・・かな?
武器
ハシやフォークなどの食器のことを「武器」と言いました。
「食事のとき自分の分け前を確保することは、言ってみれば『戦い』である」
ことなのでしょうね。
面白いことに、先の丸いスプーンは「武器」とは呼んでいなかった気がします。
「いざとなれば相手を刺してでも食料をゲットする」
という意味もあったのでしょうか(笑)
スプーンじゃ役に立たないもんなあ。
ごぼう
「ごぼう」とは、クライミングのときに岩じゃなくてロープなどを掴んでしまうことです。
鎖場などで、
「なるべく鎖に頼らないで、しっかりと3点支持で登りなさい」
と言われているのに、ガシッと鎖やロープに体重をかけて登るのも同じです。
語源としては、ごぼうを地面から引き抜いて収穫するときのような手格好になるからです。
「ダメダメ、ごぼう引っ張らないで!」
うーん、これは今でも言えば意味は通じるやすいかもしれませんね。
山の神
これ、昔は通じたのですが、今は洒落が通じずポカーンとされるでしょう。
決して「箱根駅伝で山道に強い選手」のことではありませんよ。
答えの前に例文を書きましょう。
「これ以上遅くなったら『山の神』に怒られる」
「普段から『山の神』の機嫌をとっておかないと、オレは山へ行けないからね」
という感じです。
わかります?
そう、答えは「山の神=奥さん」です。
正確に言えば「山登りをしない奥さん」ということになりますね。
むさっ苦しく、いかつい山男たちも、奥様のご機嫌をうかがいつつ、山へ向かっていたのでしょう。
現代の山の神は・・・会社の上司?
いやだなあそんな「山の神」は。
さいごに
最初に書きましたが、ここで紹介した古い登山用語は、どんどん消え去ろうとしています。
山登りのスタイルが変わってきたことが大きな要因でしょう。
ほんの数十年前までは「当たり前」だったグループ登山が、今では山岳部や山岳会以外ではなくなってしまっています。
先輩から後輩へ伝えてきたので、古い言葉でも残っていたのでしょう。
ツアー登山もグループですが、ちょっと違いますしね。
今回こうしてまとめてみましたが、別に消えていくものは「それはそれで仕方がないのだ」と思っています。
↓山岳部というものも素晴らしいと思っていますので、これからも山岳部という文化は続いていってほしいな。