こんにちは、寝袋!です。
昔の登山者は、みんな片手にピッケルを持って、
「ピッケルは、山男の命」
という感じでしたが、近年、夏道でピッケル持っている人は、よほどのベテランか「勘違い君」だけになりました。
代わりにみんなの手に収まっているのは、
登山ストック(トレッキングポール)
です。
疲労軽減、事故防止の観点から、とても重要なアイテムになっています。
今回は、登山初心者向けに、登山ストックの構造や基本的な知識を説明して、選び方などを解説したいと思います。
目次
登山ストックの役割
登山ストックには、次のような役割があります。
- バランスの補助になり、疲労軽減につながる
- うまく使えば推進力を得られて、疲労軽減につながる
- ツェルトなどの設営に使う
登山ストックの構造
まずは登山ストックの、基本的な部位の名称を見てみましょう。
登山ストックは、スキーのストックと違い、短く収納できることが大きな特徴です。
使わないときは短くして、ザックに取り付けて運びます。
また、同じ機構を使って、長さを調節することができます。
グリップ
グリップは、登山ストックを持つ場所です。
形状は、I字型とT字型に分けられ、素材もゴム製、コルク製、ウレタン製があります。
ストラップ
持ち方で説明しますが、ストラップは単なる落下防止ではなく、効果的に登山ストックを使うために必要なものです。
ポール
登山ストックの本体です。
ほとんどのモデルが、3本のポールを連結して出来ています。
安価なアルミ製、高価なカーボン製に分けられます。
ジョイント
分割されているポールを結合している部分です。
収納、長さ調節のために、簡単で、固定力が強い必要があります。
石突き
地面に接地するところで、摩耗しにくい金属製になっています。
バスケット
登山ストックが、ぬかるみや雪に埋まっていかないように必要なものです。
無雪期・積雪期で、バスケットの大きさを変えて使います。
選び方
それでは、登山ストックを買うときに、具体的にどこを見て選択すればいいのか、説明していきます。
グリップ形状
T字グリップ | I字グリップ |
上から握るようにして持ちます。下方向へ荷重をかけやすいのが特徴です。
最近はあまり使われなくなりました。推進力を得るというより、バランスの補助のみに使います。 |
現在の主流です。初心者がはじめて買うなら、こちらのタイプをおすすめします。
握力だけで握るように感じますが、実際はストラップに荷重を分散するので、案外握力は疲れません。 |
I字グリップで、下へ長く伸びたもの(ロンググリップ)があります。
これは、一時的にストックを短く使いたい時に、ストックの長さを変えないで済むので便利です。
ポールの材質
ポールの材質は、アルミ製とカーボン製があります。(ジュラルミンは前世代的なので省きます)
初めて買うなら、扱いやすいアルミ製が良いと思います。
長所 | 短所 | |
アルミ | 安くて折れにくい | 折れにくいけど曲がりやすい |
カーボン | 軽くて曲がりにくい | 高価で、折れるときは一気に |
ジョイント形式
ジョイント形式は、3種類あります。
ワンタッチレバー式、スクリュー式、フォールディング式です。
ワンタッチレバー式 | レバーの開閉でロック↔フリーを変更する |
スクリュー式 | ポールを回してロック↔フリーを変更する |
フォールディング式 | 3本のポールを差し込むのみ。長さ調整不可能なものが多い。 |
ブランドによって多少形状は違いますが、現在はほとんどのブランドで、ワンタッチレバー式が採用されています。
スクリュー式は、
「ちゃんと固定されているかどうか、パッと見でわからない」
という欠点があるので、少なくなってきました。
以前は、2大ブランドのブラックダイヤモンドがレバー式、LEKIがスクリュー式でした。
現在はLEKIもレバー式になったあたり、レバー式に軍配が上がったということです。
近年、長さが調整できない代わりに軽量&コンパクトな、フォールディング式が出現しました。
トレイルランなど軽量化に特化しないかぎり、初心者はワンタッチレバー式が扱いやすいと思います。
耐ショック機構
ポールやグリップに、スプリングを利用した、対ショック機構を内蔵したものがあります。
下りで手首などに伝わる衝撃を緩和するのが目的です。
短所として、
- 重くなる
- 先端が多少伸縮するので、体重をかけづらい
ので、人によって好みが分かれます。
レバー式の長さ調整方法
ワンタッチレバー式の、長さ調整の方法です。
簡単にしっかりと固定できます。
レバーを見ればちゃんと固定されているか判別できるので、安全です。
スクリュー式は見た目ではわからないんですよ。
持ち方
登山ストック(I型グリップ)は下のように握りましょう。
ストラップを使わないと、体重をかけられません。
おすすめモデル比較
比較表
2大ブランド、BD(ブラックダイヤモンド)と、LEKIの主要モデルをまとめてみました。
Tグリップはあえて載せていません。
BDのグリップはすべてロングタイプです。LEKIはXLという名前が付いているものがロングタイプです。
ブランドごとのネーミングの見方ですが、
- BD 対ショック機能は「ショック」という名前が付く
- LEKI 対ショック機能は「DSS」という名前が付く
- LEKI ロンググリップは「XL」という名前が付く
です。
(注)ジョイント形式 F=フォールディング L=レバー
ブランド | モデル | 材質 | ジョイント | 重さ | ショック | 価格 |
BD | ディスタンスカーボンFLZ | カーボン | F+L | 360 | 無 | 20,520 |
トレイルプロショック | アルミ | L | 615 | 有 | 15,768 | |
トレイルプロ | アルミ | L | 545 | 無 | 14,580 | |
トレイル | アルミ | L | 510 | 無 | 9,720 | |
LEKI | マイクロバリオカーボンDSS | カーボン | F+L | 482 | 有 | 29,000 |
マイクロバリオカーボン | カーボン | F+L | 446 | 無 | 27,500 | |
SPD2サーモライトXL | アルミ | L | 478 | 無 | 19,500 | |
ジャーニーSPD | アルミ | L | 562 | 無 | 11,500 |
アドバイス
ストックは壊れない限り、なかなか買い換えるものではありません。
そこで、初心者とはいえ、中級モデルを最初から買えば、のちのちまで使えるのでオススメです。
初心者にアドバイスするなら、
- 扱いが雑でも折れにくいアルミ製を買おう(カーボンは高いですし)
- 長さ調整出来るものを買おう(自分に最適な長さがわかるのは使ってからです)
です。
私が直接おすすめするなら
一気に最上級モデル買っておきたい人
「自分にぴったりのストックの長さ」を知ってから本当はおすすめしたいところですが、
「だいたいわかってる。最初から最上級買って買い替えをなくしたい」
という人には、BDのディスタンスカーボンFLZがいいでしょう。
長さを「95-110cm」「105-125cm」「120-140cm」から選んで買う必要があります。
多少の調整幅があるので、よほどじゃないかぎり失敗はしません。
ブラックダイヤモンドはLEKIよりも安いけど、性能には全く違いはありません。
対ショック機能が欲しい人
対ショック機能が欲しい人には、BDのトレイルプロショックをおすすめします。
対ショック機能がないほうがいい人
個人的に、もっとも初心者におすすめです。
折ったりして壊さない限り、ストックを買い替える必要はないでしょう。
最後に
いまでは、登山者の装備に、登山ストックは欠かせないものになりました。
じつは有効性が半信半疑で、使われていない時代もあったんですよ?
始終使わない人でも、怪我したときのために、ザックに差してある姿もよく見かけます。
それだけ、浸透してきたということでしょう。
登山ストック(トレッキングポール)は、価格による違い、軽さによる違いはあるものの、
ストックの性能差では登山能力は変わらない
もので、むしろ、
ストックを使うか使わないか
のほうが影響が大きいです。
ついつい高級モデルに目が向きますが、壊れにくいシンプルなモデルを選ぶことが正解ですよ。
1万円で買えて、これがあれば不足はありません。
高級モデルを買うより、他の道具にお金を回しましょう。