こんにちは、寝袋!です。
北海道のある無人小屋に泊まったときのことです。
突然の荒天になり、テント泊の人も小屋に逃げ込んできて、10人くらい泊まってた夜でした。
私は食事の前に、チビチビとスキットルでウイスキーを飲みながら、その日に撮影した写真を見ていました。
すると突然、女の子2人組に声を掛けられました。
めんこい(北海道弁で「かわいい・微笑ましい」)お願いだったのですが、今でも記憶に残っている出来事だったなあ。
山のベテランさんにも、昔を思い出しながらぜひ読んで欲しいお話です。
写真を撮ってもらえますか?
「すみません、写真を撮ってもらいたいんですけど・・・」
そう声を掛けてきたのは、20代の女の子2人組の1人でした。
チビチビとお酒飲んでた私は、見ていたカメラの液晶画面から顔を上げて返事しました。
「あ、いいですよ。どんなふうに撮ればいいですか?」
すると、
「私たち、今日初めて山の上で泊まるんです。ですから、山小屋にいるぞという感じの写真をお願いします」
とおっしゃる。
それではと、
「2人が寝袋に下半身を突っ込んで、壁にもたれてる姿」
で写真を撮ってあげました。
古ぼけた木の壁をバックに、寝袋とアウトドアジャケットという感じです。
「あ、いいですね。ありがとうございます」
無事に終了です。
2人ともとてもうれしそうで、ボロボロの小屋内をアチコチ目を走らせては、ああだこうだ話し合っています。
「帰ったら◯◯ちゃんに報告しないと・・・」
みたいなことをキャッキャと話してた。
うーん、初々しくて微笑ましい。
今晩のメニューを発表しまーす!
そのうち、周囲の人がみんな食事の準備をはじめました。
私もお湯を沸かして、準備していたような気がします。
すると、先ほどの2人のほうから、声が聞こえてきました。
おそらくリーダーというか「言い出しっぺ」と思われる女の子が、
「じゃじゃーん、では、今晩のメニューを発表します!」
拍手するもうひとり。
そんな大きな声じゃないんですが、狭い小屋なので、どうしても聞こえてしまうんです。
思わず私まで顔を上げて、メニューの発表を待ってしまいました。
「メインはこれで、これに◯◯が付きます! あと、デザートもあります!」
さらに拍手のテンションが上がりました。
他の人達も気づいたらしく、微笑ましく2人を眺め、また自分の食事準備に戻っていきました。
そのあと、2人は、バーナーでお湯を沸かしたり、悪戦苦闘・試行錯誤しながら、食事を楽しんでいるのが、聞こえていました。
初心者から教わることがあります
それから、彼女たちを交え、数人で山や天気の話をしたりしながら過ごしました。
今の自分ではなんとも思わないようなこと、たとえば、
- はしごの乗り降り自体が面白い
- 壁の割れ目からすきま風が入ってくる
- 人の隙間を通ってトイレに行く
- どっちを頭にして寝るか悩む
というようなことが、ぜんぶ彼女たちにとっては楽しいのです。
「これが山の上で夜を過ごすということ・小屋で寝るということ」
ああ、自分も最初はドキドキしながら、こういう夜を過ごしたんだろうなあ。
すごい冒険をしている気分で、帰ったら自慢気に友達に話したものです。
変な意味ではなく、私は初心者が好きです。
自分が忘れてしまいそうになる山の楽しさを、思い出させてくれるからです。
マナー違反はだめだけど、マナー違反は初心者だから多いというわけではありません。
むしろ、初心者の方がよく勉強して守ってる場合も多いくらいです。
いろいろと、初心を思い出させてくれる初心者さん、あなたたちもベテランに教えてくれていることがあるんですよ。
その夜はとくに、ベテラン風を吹かす困ったおじさんもいない、いい夜でした。
だから、今でも記憶に残っているんだと思います。