こんにちは、寝袋!です。
アドベンチャーレーサーの田中陽希さんが、数年前から行っている日本縦断企画「グレートトラバース」シリーズ。
NHKで放送されて人気のようですので、ご存知の登山者も多いでしょう。
私も縁あって知り合ってからは、時々拝見しています。
2021年4月現在、集大成とも言える300名山チャレンジも、残すは北海道の数座を残すのみ。
そんななか、私の耳にとんでもない情報が入ってきました。
「田中さん、日高山脈を縦走するらしいよ」
というのです。
もちろん、詳しい計画はわかりませんが、北海道の岳人ならば、思い浮かぶルートがあります。
正直、残りの山を1つずつ登っていくのならば、それほど苦労することはないと思っていましたので、あまり興味もなかったのですが、
「日高山脈を縦走するとなると話は別」
というわけです。
もし私が想定するルートならば、ハッキリ言って過去最難関間違いなしです。
ご存じないファンの方々のために、日高山脈縦走についてお教えします。
予備知識を持って、今後の放送を観られれば、より楽しめると思いますし、もし成功したときの凄さがわかると思います。
※(5/1追記しました)4月末、無事に縦走成功されました。縦走コースは私の想像と期待どおりで、今からテレビ放送が楽しみです。カメラマンは誰だ?
目次
日高山脈縦走とは?
日高山脈縦走は他の縦走とは違う
基本的に、日高山脈の一部でも縦走すれば、それは日高山脈縦走と言えるかもしれません。
ただ、2つ3つピークを縦走するだけでは、軽々しく縦走と言ってはいけない世界、それが日高山脈です。
アルピニズムあふれる岳人ならば、日高山脈の主稜線の大部分を含まなければ、恥ずかしくて「日高を縦走した」なんて言えないのです。
今回、田中陽希さんが残す日高山脈の山は、
- 幌尻岳
- カムイエクウチカウシ山
- ペテガリ岳
- 神威岳
の4座です。
これらを一気に縦走するということは、立派な「日高縦走」になるといえるでしょう。
田中さんのツイッターで拝見すると、装備的に見てもおそらくそういう計画だと思います。
日高山脈の縦走時期について
ちなみに4月21日前後に入山していらっしゃいまして、縦走が無事に完了すれば、下山は5月上旬ということになるでしょう。(今4/22に書いてます)
日高山脈の山の上はまだまだ真っ白な銀世界です。
さて、意外かもしれませんが、日高山脈の縦走が一番しやすいのは、じつはこの春の時期と言われています。
夏、雪がなくなると、登山道がまともにない日高の稜線は、地獄のようなハイマツ藪こぎになるのです。
また、水場を求めていちいち高度を落とさなければ、飲み水が手に入りません。
じつは夏は大変なんです。
今回、田中さんが歩かれる時期は、山は雪に覆われていますので、雪の上を歩けます。
しかも、雪を溶かせば水がどこでも手に入ります。
そういう面で、「比較的」縦走には向いている時期なのです。
「雪山なのにすごい」と思わず、「日高山脈を縦走するが可能な時期はいつか?」田中さんが導き出した答えだと思って感じてください。
過大評価せず、過小評価せず。
それでもかなりすごいことだというのは、以下の説明を読んでもらえばわかると思います。
想定されるルート

日高山脈縦走予想図
あくまでも私の想像で、勝手な期待もあるかもしれませんが、日高山脈縦走の予想ルートを書きます。
- 日高町チロロ林道から北戸蔦別岳へ登る
- 幌尻岳登頂
- カムイエクウチカウシ山へ稜線上を移動
- カムイエクウチカウシ山登頂
- ペテガリ岳への稜線を移動
- ペテガリ岳登頂
- 神威岳へ登頂
- 浦河町荻伏へ下山
違ってたらすみません。
予想される困難
かんたんに、今回の予想ルートで困難と思われるところを挙げてみます。
テレビ放送でも、きっとハイライトになるはずです。
藪こぎはないけど切り立った稜線を越えていく
「日高山脈縦走は春が比較的やりやすい」と前述しましたが、それでも一般の登山者が太刀打ちできる世界ではありません。
ただでさえ切り立った細い稜線が多いのに、そこに雪庇(せっぴ。雪のひさしが付いて踏み抜くと滑落の原因)が付いています。
雪庇の上はもちろん、稜線の上も歩けず、反対側の斜面をピッケルとアイゼンで横ばいのように越えていく場所が、立ちはだかるでしょう。
カムイエクウチカウシ山からペテガリ岳への稜線
縦走ルートの中で、とくに厳しいと予想されるのが、カムイエクウチカウシ山からペテガリ岳への稜線でしょう。
今回田中さんは横を通るだけですが、1839峰(いっぱーさんきゅーほう)の前後は、すごい映像が飛び込んでくるはずです。
なかなかテレビカメラで撮影されないので、かなり貴重なシーンになると思います。
楽しみ。
当然ずっとテントか雪洞
当然ですが、登山道がないルートですので、避難小屋なんてありません。
テントで寝るか、雪洞を掘って寝ることになります。
雪洞とは、かまくらのようなもので、雪山ではテントより安全で暖かい方法です。
ただし、掘るのに時間がかかりますし、適した場所を見つける必要もあり、1日の行動時間が制限されるのです。
カメラマンさん
今回ついていくカメラマンさんは、誰になるのでしょう。
そのあたりも注目です。
また、雪洞も別、確保もなしというこれまでのスタイルを守るのであれば、それはカメラマンさんにとっても田中さんにとってもリスクが高いことになります。
荷物が重い
おそらく2週間分以上の食料と、冬山装備を背負っていくことになります。
かなり重い荷物となることが予想されますが、雪山の行動では重い荷物は夏以上に敏捷性と体力を奪うものです。
田中さんの体力はものすごいですが、それでもかなり苦労するのではないでしょうか。
完走できるか?
上で書いた想定通りの縦走ルートとしてですが、間違いなく過去最難関となるでしょう。
仮に途中でエスケープすることになっても、それは仕方がないことです。
個人的に、この縦走を計画してやってみようとチャレンジすること自体に、拍手を送りたいですね。
北海道の山岳ガイドのプロフィールを見ていただきたいのですが、日高山脈縦走を達成すると、経歴に書いてもおかしくないことがわかると思います。
山岳ガイドの経歴に「北アルプス全山縦走」なんて書かないでしょう。
日本では日高山脈ぐらいかな。
そんなレベルです。
続報が楽しみですし、ぜひとも成功して、素晴らしい映像を観せていただきたいものです。
そして何よりも、スタッフともども、無事に下山していただきたいと願っています。
追記(2021 5/1)
4/29、無事に日高山脈縦走を成功され、浦河町に下山されました。
縦走コースは私が想像、そして期待した通りのもので、素晴らしいと思います。
今度お会いする機会があれば、ぜひとも感想など聴きたいところです。
今後は、少し体の回復を待ってから、東へ向かわれるのかな?
最大の難関を終えられたとは言え、無事のゴールを祈ります。
日高山脈の映像、楽しみです。