こんにちは、寝袋!です。
「山登りは、汗をかかないような登り方で!」
というのは、入門書や番組などでよくアドバイスされる山登りの極意です。
でも、登山されてる方、おかしいと思ったことありませんか?
少なくとも、私は思いました。
「あんな大変な運動して、汗をかかないなんて絶対無理!」
「きっと『なるべく』ってことでしょ?」
ってね。
登山者はみんな高性能な速乾性のウェアを着ます。
それは山を歩くと汗をかくから。
でも、どんな高性能のウェアを着てても、やっぱり汗だくになった経験あるんじゃないでしょうか?
今回は、
- 高性能ウェアでも濡れてしまう理由
- 汗をかかない登り方の本当の意味
について解説したいと思います。
登り方あっての高性能ウェアです。
どんどん良いウェアに買い換えても、登り方が一緒なら結局は同じこと。
汗をかかない歩き方を知って、余計なお買い物をしないようにしましょうよ。
目次
自然の中で汗をかくと気持ち良い?
山登りを趣味にしていると、
「自然の中で遊んで汗をかくと、きっと気持ちいいんでしょう?」
と言われます。
自然を感じながら体を動かして山を登ると、体は疲れはしますが、それ以上に心がスッキリします。
「アクティブレスト」というらしいですが、たしかに体を動かして汗をかくことは気持ちがいいですよね。
でも、私たち登山者は知ってます。
汗をかく山登りは気持ちよくても、汗自体はとっても厄介なことを。
「山で汗をかくとろくなことがない」
私は登山初心者を山に連れて行く場合、口癖のように言います。
「山で汗をかくと、ろくなことがないよ」
その理由はざっと以下の3つです。
喉が渇く
運動が激しくなって汗が増えるほど、喉が渇きます。
山では水分は貴重で、自分で運んでいく「荷物」です。
できれば必要以上の水分は持って行きたくない。
つまり、ゴクゴク飲んで「プハーッ、うめえーっ」なんていうのは、避けたいわけです。
疲れる
山登りに限りませんが、運動の強さが激しくなると、疲れもどんどんたまります。
後でくわしく書きますが、
「汗をかく」=「運動が激しい」
ということですから、汗をかいているということは早く疲れるということになります。
汗が冷えて寒い
汗をたくさんかくと、ウェアが濡れてしまいます。
ウェアが濡れると汗が冷えて、一気に寒くなってしまいます。
体が火照っているうちはいいですが、休憩して落ち着いてくると、濡れたウェアが水を浴びたように冷たくなります。
そこに風でも吹こうものなら・・・。
これを「汗冷え」と言いますが、その状態を避けたいために、登山者はウェアを工夫するわけですね。
登山者にとって、汗は寒いもの。
汗をかいてしまう原因3つ
それでは、山登りで汗をかいてしまう原因はなんでしょうか?
ペースが早い
まずは、歩くペースが早い場合です。
これは勘違いする人が多いのですが、
「呼吸も心臓がラクだから、ペースが丁度いいわけじゃない」
ということです。
「おれ、体力あるから楽勝で登ってこれたよ。汗びっしょりだけど、余裕余裕!」
厳密に言えば、
「呼吸や心臓に余裕があると、汗もかきにくい」
とは思うのですが、私は分けて考えたほうがいいと思います。
くわしくは後述しますが、あなたにとってのマイペースは「じつはもっと遅いのがいい」かもしれないってことです。
厚着してしまう
山に登り始めると、最初は寒く感じたり涼しいものです。
でも、少し時間が経つと、体は熱く感じて汗をかいてきます。
さっきまでちょうど良かったウェアが、途端に暑く感じて脱ぎたくなってきます。
「ちょっと寒く感じるくらい」
がちょうど良いですよ。
暑く感じてから脱いでもいいですが、その時点でもう汗が冷たく感じることがあるので困るんですよね。
気温が高い
厚着しなくても、そもそも気温が高すぎる場合は、汗をかいてしまいます。
夏の低山なんて、Tシャツ1枚でじっとしてても汗が出てきてしまいますよね。
これはもう、仕方がないことなのです。
しかし、逆に言えばそんなに暑いときは汗が乾くのも早いので、それほど問題にならない(危険ではない)とも言えます。
優れたウェアにも限界あり
「汗はかくもの!だからこそ、すぐに乾く高性能ウェアがあるんじゃないか!」
たしかにそうなんですが、ちょっと考えてほしいのです。
野良仕事が教えてくれた
私は田舎暮らしをしていますので、いろいろな野良仕事をしています。
草刈り、チェーンソーでの伐採、薪運び、畑耕し、などなど。
古くなった登山用ウェアが作業着なんですが、そこで気付いたことがあります。
『どんなに高性能なウェアでも、吸汗&速乾には限界がある』
ということです。
登山のときはあんなに良かったのに、野良仕事を頑張っていると、気づくと汗だくになってしまってるんですよね。
「おりゃー、そりゃー」
と目一杯力を入れてやる仕事が多いので、もうパンツまでぐっしょり、それこそバケツで水をかぶったように。
この野良仕事は、言ってみればオーバーペースの登山と一緒です。
汗が出るまで頑張ってしまうという真実
人によってペースは違いますし、汗のかき方も違います。
ところが、いざ歩き始めると、人間汗の量なんて気にしないはずです。
ペースについて気にするのは呼吸と心拍数と、コースタイムぐらいでしょう?
ですからじつは、
マイペースは肺と心臓で決まるんじゃない!
汗をかかないペースこそが良いペースなんだ!
ということなんです。
長々と書いてきたのは、それを知ってほしいからなんです。
「汗をかかない」とは「汗をためない」こと
「だーかーらー。汗をかかないなんて無理なんだってば!」
そう怒らないで聞いてくださいね。
言い換えるなら「汗をかかないように歩く」とは、
出る汗≦乾いていく汗
というペースで歩くということです。
少し汗をかきながら、同時に汗がほとんど乾いていく。
ウェアはしっとり濡れてはいるけど、いつまでたっても濡れ方は同じ。
休憩に入ったら最初少し濡れてるけど、すぐに乾燥して快適!
これこそがあなたのマイペース、ちょうどよいペースなんです。
たぶん、今より遅くなると思います。
でも、1時間で登っていたところが、1時間5分になるようなものです。
案外ペースって時間差が生まれないものです。
「途中で追い抜いてきた遅い人が、ちょっと休憩してたらすぐに追いついてきた」
という経験、ありませんか?
やってみて!「汗をかかないペースにするコツ」
呼吸と心臓が辛くないペースより、ほんの少し遅くする。
マイペースと思ってたのより、意識的にもう少し遅くする。
最初のうちは難しいかもしれませんので、私がアドバイスしているコツをお教えします。
それは、1、2、1、2、で歩かないこと。
それはあなたの今までのペース。
それを、1、ウン、2、ウン、1、ウン、2、ウン、で歩くようにするんです。
右足を前に着いたら、すぐに左足を上げるじゃなくて、両足が着いたままの時間を一瞬作ります。
説明が下手かもしれませんが、わかりますか?
これはじつは、雪山のアイゼン歩行のリズムと同じなんです。
今度、山のテレビ番組などで、ガイドさんたちの足の進め方をよく観察してみてください。
みんな、思ったより一歩一歩に間がありますから。
まとめ
力が入ると、ついつい説明が回りくどくなってすみません。
まとめると、
- 山で汗をかかないペースで歩きましょう
- どんな高性能ウェアでも、それが出来なければ結局濡れます
- ペースを落とす歩き方のコツ
ということについて説明してきました。
山で汗をかくことは、最初のうちはそれほど問題にはなりません。
でも、そのうち高い山へ行くようになると、大問題になってくるのです。
それは命を左右するほどのことであって、登山においては永遠の課題です。
ずっとあなたを悩ませるものなんですよ。
だからこそ、ウェアの買い替えという無駄なお金を使う前に、正しいペースを習得してください。
身につけるべきは高性能ウェアじゃなく、正しいペース。
がんばってください。私もがんばります。
それでもいつか、もっと速乾のウェアが欲しくなるかもしれません。
汗をかくのを覚悟で速いペースで登りたいときや、重い荷物を背負う時。
そのときは、
patagoniaのキャプリーンなどが必要になるかもしれません。
「まずは精進」ですよ。