こんにちは、寝袋!です。
北海道のど真ん中、大雪山系は、
「山の高さは富士山で知れ、山の広さは大雪で知れ」
と言われるように、広大な山地が広がっています。
旭岳ロープウェーに乗ると、車内(?)放送で、どこかの詩人が残したこの言葉が流れます。
私は、この放送を聴くたびに、
「またここに来たな~」
と気分が盛り上がります。
さて、その広大な大地を貫くように歩く、長大なロングコースがあります。
大雪縦走
です。
多くの登山者が憧れるルートですが、上級者以外には難しいルートでもあります。
そして、それを乗り越えた時の感動は、なかなか味わえるものではありません。
テント場、水場、携帯電話、コースの様子など、私が知る知識をぜんぶ詰め込んで、まとめてみます。
北海道最長級のロング縦走ルート、ぜひ、歩いてみてください。
目次
大雪縦走とは?
最大80km超の山旅
大雪縦走と言いますが、いくつも登山口がありますし、コース取りも幅広いです。
代表的なものだけでも、次にあげるものは全部「大雪縦走」と呼ばれます。
もちろん、逆方向も含みます。
旭岳~黒岳(日帰り)
旭岳温泉ロープウェーと層雲峡ロープウェーを結ぶ、初心者向け縦走です。
旭岳(黒岳)~トムラウシ山(2~3泊)
旭岳温泉ロープウェーもしくは層雲峡ロープウェーを使って高度を上げ、高根ヶ原を歩き、トムラウシ山までの縦走です。
中級者~上級者向けの縦走路です。
『トムラウシ大量遭難事故』は、この縦走で起きた事故でした。
人気のコースです。
旭岳(黒岳)~富良野岳(4~6泊)
一般的な登山者で、最低4泊5日、ゆっくり楽しむなら6泊以上かかります。
北海道の縦走ですから、よくて避難小屋、ほとんどがテント泊という、どっぷり大自然に浸れるルートです。
ヒグマの多い地域、限られた水の確保、エスケープ出来ないプレッシャー、ごく少ない登山者。
ルート取りにもよりますが、最長80kmを越えます。
縦走登山に慣れた人だけが挑戦するルートです。
旭岳~富良野岳の歩き方
今回は、旭岳から富良野岳まで、大雪山から十勝連峰まで全てを歩くルートについて解説します。
トレッキング用語で言えば、これだけが「スルーハイク」で、他はすべて「セクションハイク」と感じるのです。
この縦走ルートは、全体として、3つの部分に分けて考えるといいです。
- 大雪山(旭岳からトムラウシ山まで)
- 連結部(トムラウシ山からオプタテシケ山まで)
- 十勝連峰(オプタテシケ山以降)
宿泊地の確認
長いルートですから、縦走中には天候などの影響で、予定変更が必要になる場合が出てきます。
そのため、予定の場所ではなくても、すべての宿泊地の情報を知っておくべきです。
水場の確認
水場はかなり限られます。
残雪がないと得られない水場、いつも確保できる水場の違いも含めて、頭に入れておきましょう。
すべての水は、浄水器か煮沸消毒が必要です。
この縦走では、携帯浄水器は必須です。
また、すれ違う人がもしいたら、積極的に水場情報を交換しましょう。
服装
トムラウシ大量遭難事故でもそうでしたが、夏場でも天候によってとても冷え込みます。
氷点下も有り得ます。
秋の北アルプスぐらいを想定しておく必要があるでしょう。
使わなくても準備はしておくべきです。
また、薄いレインウェアでは藪こぎ(連結部が一番濃い)で破れてしまうでしょう。
強度に気をつけて準備してください。
藪こぎの具合は年によって違います。
ヒグマについて
人が入らないところ=ヒグマが自由に生活しているところ
です。
必要以上に神経質になることはありませんが、最低限の対処法を覚えておきましょう。
大雪の避難小屋&テント指定地リスト
縦走ルートにある、テント指定地と避難小屋のリストです。
水場は、◯=あり、△=残雪による
小屋 | 水場 | 携帯 | 管理人 | トイレ | |
裏旭テント場 | × | △ | ◯ | × | × |
黒岳テント場 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
白雲岳テント場 | ◯ | △ | △ | ◯ | ◯ |
忠別岳テント場 | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
ヒサゴ沼テント場 | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
南沼テント場 | × | △ | ◯ | × | 携帯 |
双子池テント場 | × | △ | × | × | × |
美瑛富士テント場 | ◯ | △ | ◯ | × | 携帯 |
カミホロテント場 | ◯ | △ | ◯ | × | ◯ |
緊急避難で使えるテント場
このロングルートの最大の問題点は、
トムラウシ山から美瑛富士までの間に、エスケープルートがない
ことです。(正確には「あるけれど使いにくい」)
一度足を踏み入れたら、どちらかに抜けるまで歩き続けるしか脱出できません。
この区間には、緊急避難的にテントを張れる場所がいくつかあります。
念のために、覚えておくといいかもしれません。
この区間の正式なテント指定地は、双子池だけです。
- 下の地図は上から順番に、トムラウシから美瑛富士方面となります。
- 緑のマークは、かろうじてテントが張れる地点です。
三川台
三川台は、テント指定地ではありませんが、数張り分の広さがあります。
さらに、やや下ったところに、1張り分の空き地があります。
そこから、少し下ったところに水場もあるので、いざという時には便利です。
三川台から、北西方面へと続く廃道があります。
そこは、台地林道(通行止め)を経て降りるエスケープルートです。
ただし、人のいる場所まで距離もありますし、下調べ必須です。
計画例
ルート全体のおおまかなコースタイムです。
5泊するなら、だいたい下のようになります。
4泊ならばヒサゴ沼の一泊を削る形になります。
南沼から美瑛富士の間が正念場(約12時間行動)となります。
時間が許すならば、さらに1泊ないし2泊多めに、ゆっくりと歩かれると、じっくりと楽しめるかと思います。
地点 | コースタイム | 泊 |
姿見駅 | – | |
旭岳 | 2H | |
白雲岳 | 5H | 1泊目 |
忠別岳 | 3.5H | |
化雲岳 | 3H | |
ヒサゴ沼 | 1H | 2泊目 |
トムラウシ南沼 | 3H | 3泊目 |
三川台 | 1.5H | |
双子池 | 5H | |
美瑛富士 | 5.5H | 4泊目 |
十勝岳 | 4.5H | |
上ホロカメットク | 0.5H | 5泊目 |
富良野岳 | 4H | |
十勝岳温泉 | 2.5H |
季節について
「どの季節がいいですか?」
と言われれば、
「いつでも、それなりにいいですよ?」
と、優等生のような返答はしません。
このルートに関しては。
「絶対に残雪期がいいです! 6月末から7月中旬まで!」
- 雪渓のおかげで水が豊富に採れる
- 雪解けの時期のお花がきれい
- 残雪と緑のコントラストが美しい
という理由からです。
とくに、水が取りやすいかどうかは、縦走には大きな問題です。
写真でルート解説
それでは、写真とともに、ルートの様子を解説していきます。
旭岳~白雲岳避難小屋
姿見駅の周囲には、観光客も大勢居ます。
そこから少し高度を上げると、観光客は消え、登山者だけの世界になります。
静かな山旅の始まりです。
旭岳の山頂から、登ってきたのとは反対側へ降ります。
長い雪渓歩きで、下には「裏旭テント指定地」が見えます。
白雲岳までは、北海岳を経由して最短距離を進んでもいいですし、北鎮岳や黒岳を回って(いわゆるお鉢めぐり)行くのもおすすめです。
白雲岳山頂からのゼブラ模様は、この季節ならではの見ものです。
これから歩く山並みが見えます。遠いでしょう?
白雲岳避難小屋は、とても素晴らしい立地です。
次に泊まるのは、ヒサゴ沼か南沼ですが、どちらも水は豊富なので、行動用の水だけ背負っていきましょう。
白雲岳避難小屋~ヒサゴ沼避難小屋
白雲岳避難小屋からは、高根ヶ原というなだらかで広い台地を、忠別岳目指して歩いていきます。
朝陽に照らされる高山植物が美しく、足がなかなか前に進みません。
忠別岳避難小屋の水場は、雪渓を写真左側に下っていったところです。
五色岳への登りは、ずっと背の低い灌木のトンネルです。
縦走ザックを背負っていると、よくひっかかるんだこれが。
年によって刈り払いの感じが違うので、一応覚悟して行きましょう。
五色岳手前から化雲岳(上写真左のポッチン)までは、ハイマツ帯に入ります。
まさにハイマツの海といった感じです。
ここを抜けると木道が現れて、お花がたくさん咲いている湿地帯になります。
ホソバウルップソウが群生していますよ。
ヒサゴ沼は、小屋の手前に水がジャバジャバ流れているので、それを利用します。
沼の水は使わないほうがいいです。
ヒサゴ沼は、周囲を小高い山に囲まれて、風も少なくてとても気持ちの良い場所です。
ここを素通りするのは、とてももったいないです。
2019年、ヒサゴ沼避難小屋は改修されました。チェックしておいてください。
ヒサゴ沼避難小屋~南沼テント指定地
ヒサゴ沼を出発すると、多少アップダウンを繰り返しながら、トムラウシ山へ向かっていきます。
岩稜帯あり、庭園あり、バリエーションに富んだ面白いコースです。
2箇所ほど、
「えっ、これどこを登るの?」
と思わず声が出る岩稜帯があります。
まるで壁のように感じます。
マーキングを頼りに登っていきますが、視界の悪い時は注意してください。
縦走路を北から来ると、トムラウシ山頂に直接登るコースと、トラバースして南沼テント指定地へ向かうコースに分かれます。
ここまできて山頂に登らない人はいないと思いますが、トラバース道は残雪期には気をつけてください。
ルートをロストしやすいです。
南沼は水がジャバジャバ流れています。
この先の宿泊地、美瑛富士避難小屋では、水が採れない場合があります。
雪渓のなくなる時期が早い(早いと7月上旬にはアウト)のです。
そのため、ここで十分に水を積んでいくのが安心です。
一番長い行動時間になりますから、水は十分かつ最低限の量を計算してください。
双子池で水が採れるという情報があれば、そこで補給する計算もできます。
南沼テント指定地~美瑛富士避難小屋
南沼から美瑛富士はとても長いです。
この縦走を達成するための、最大の難所と言えるでしょう。
コースタイムで13時間、重い荷物と水を背負って、野性味あふれる道を歩きます。
何度もアップダウンを繰り返して、そのうえオプタテシケ山を、標高差600m直登しなければいけません。
オプタテシケ山は、こちらからの縦走者にとって、乗り越えるべき大きな壁なのです。
三川台の下のカール地形の端を歩いていきます。
今日のコースは、極端に人の少ないところなので、すれ違う人がいるかいないかです。
ここですれ違う人は、みんな、仲間に合ったような顔になります。
いよいよオプタテシケ山です。
この雪渓は長い上に、上に行くほど急になります。
軽アイゼンを準備していくほうがいいです。
オプタテシケ山が最後の難関と言ってきましたが、じつはここから美瑛富士避難小屋までも長いです。
疲れた体には、とくに厳しく感じるのです。
美瑛富士避難小屋が見えたときは、ほんとうに安心しますよ。
「やりきったーー」
と感じるでしょう。(縦走はまだ終わりじゃないけど)
美瑛富士避難小屋は、携帯トイレブースがありますが、早い時期には設置されていません。
水は、近くの雪渓からなんとか採る必要があります。
ここに枯れない水場があれば・・・と思います。
美瑛富士避難小屋~カミホロカメットク避難小屋
十勝連峰は、美瑛岳、十勝岳、カミホロカメットク山、そしてゴールの富良野岳への続きます。
今までの緑あふれる世界から、荒涼とした砂礫の世界に変わります。
人も増えて、縦走の終わりを意識します。
しかし、じつはよく見ると、荒涼としたなかにも案外花は根付いていて、たくさんの花と出会えるでしょう。
カミホロカメットク避難小屋の雪渓を下っていくと、雪渓端に水が流れています。
残雪期の水の確保に困ったら、雪渓を探しましょう。
カミホロカメットク避難小屋~十勝岳温泉
6月下旬でも、富良野岳はたくさんの人が登ってくるでしょう。
カミホロカメットク山から歩く縦走者には下山する時間ですが、日帰り登山者にとっては登りの時間です。
大きなザックを背負って、こんな早い時間に下山するので、とても興味をしめされます。
「旭岳(黒岳)から来ました」
という誇らしさ。
歩ききったという達成感を、さらに盛り上げてくれるでしょう。
逆向き
富良野岳から入って、旭岳のほうへ北上していくのも、もちろんアリです。
その場合も、美瑛富士避難小屋からの1日が正念場です。
オプタテシケ山の雪渓は、下りで体力的には楽です。
それからトムラウシまで、アップダウンあるものの、基本的には登りになります。
三川台までしか辿り着けない人が、けっこういます。
最後に
「冷静に、冷静に」
と思いながら、ついつい熱く語ってしまいます。
私、この縦走ルート、大好きです。
「ここを歩いたことがある者同士でしか、語れないことがある」
と、言ってしまうほど思い入れがあります。
それだけ達成感を得られるのは、
営業小屋なしで歩ける大自然のロングルート
だからではないでしょうか?
「体力、装備、経験、生活術」長い縦走路を、自分の力だけを頼りに歩ききる。
その感動を、あなたも感じて欲しいと思います。
頑張ってください。
テント場は縮小して利用可能のようですが、混み合う時期は注意が必要です。
縦走計画をたてる際には、ご注意ください。
黒岳⇔忠別岳か、裏旭⇔忠別岳かな?
ヒサゴ沼まで行くか?
2020年のわたしの縦走装備一覧表
2020年、大雪山系を縦走したときの装備を一覧表にしました。
すべての装備の重さ、写真付きで、食料もすべて載せてあります。
参考になればと思います。
【おまけ】携帯浄水器
この縦走路を歩くには、携帯用浄水器が絶対に便利です。
いちいちガスで煮沸していたら、ガスがどれだけいることか。
かならず持参しましょう。